家族のカタチ

□4.砂塵舞う道中
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「大丈夫?コレット。」

カーノ達が村でフォシテスとの戦いを繰り広げていた頃、クラトス達は砂地を歩いていた。

南にあるという旧トリエットへと足を進める途中、コレットが疲弊している事に気付いたリフィルが声をかける。

小さな少女は平気です、と前進を続けるが、今にも倒れそうな体にリフィルはそれから遺跡に着くまで彼女を支えて歩いた。

そうしてついにその姿を現した遺跡に、足早に駆け寄り腰を下ろす。

「少し休みましょう。」

「でも…」

「…先を急ぐ気持ちも分かるけれど、
無理をして倒れてしまっては意味がなくてよ?」

そう言って、リフィルはクラトスに視線を移した。
それが了承を得る為のものだと察したクラトスは、「好きにすればいい」と石柱に背を預けた。




真上にあった陽が傾き始めコレットの状態も良くなってきた頃、一応見張りという名目で女性陣からは離れた場所で砂の海を眺めていたクラトスは、薄茶色の世界の中に浮かぶ異色の存在に気付いて柱にもたれかかっていた体を起こした。

点のように見えたそれが、段々形を成していく。どうやら此方に近付いて来ているようだ。1つかと思ったそれは途中で2つに分かれた…ように見えただけで、恐らく最初から2つだったのだろう。

更に距離を詰めると、大きさがばらばらな事に気付く。左にあるそれは丁度人間ぐらいのサイズで、右はその半分ぐらいの高さだ。

そこで漸くクラトスは動いた。少数であんなに堂々としているのだから敵ではないだろうが、こんな所に一般人が来るとも考えにくい。観光ならここより少し前にあるトリエットに行くだろうし、自分が今居る場所は神子以外が来ても瓦礫の山があるだけだ。

まさかロイドじゃないだろうなと一抹の不安を感じるが、彼の側にはストッパーが居た筈だ。どういう関係なのかはまだハッキリしないが、殆どロイドと共に居た気がする。

そういえば名前を聞いていなかったなとサングラスのせいで素顔の知れない青年の姿を思い出しながら、かなり鈍足で迫り来る2つの影へと接近して行った。




そして残り僅か数メートルというところまで来て、先程の「まさか」と頭に思い描いた風景は現実のものとなった。

忠実に再現されたわけではなかったが、だからこそ事態は最悪だった。
2つだった影の正体は例のストッパーとロイドに犬だと言われている古代生物で、両方の背にはぐったりとしたロイドとジーニアスが背負われていた。

何で同行するのを阻止していた人物が真逆の行動をとっているのか。そう考える間もなくおんぶの土台になっている青年は此方の存在に気付かずに衝突した。

そして顔を上げ虚ろな目でこちらを見ると、そのまま意識を失ったようで力無く崩れ落ちる。

それを反射的に受け止めたはいいが、それからどうすればいいのか決めかね、困ったクラトスは隣に居る動物を見たが、見られた方は心配そうな鳴き声を上げるだけだった。

クラトス=アウリオンという男は愉快なメンバー達の中で比較的冷静で淡白そうなキャラではあるが、だからと言ってこんな場所に動けなくなった人間を捨て置く程冷血ではなかった。
しかもその人間は自分と無関係の存在ではないのだから、放っておくという選択肢は彼の中から排除された。

そうなれば残るのは連れ帰るという選択で、渋々それを選んだクラトスはまず青年を胴体で支え、その背でのびている少年をノイシュへと移した。
そして自分は青年を背に乗せる。それは体格的に既にジーニアスを乗せていたノイシュにこちらを任せるのは酷だろうという配慮だった。

細かい所でこういった気遣いの出来るあたり、彼は根本的には優しい人間で、ただその優しさはロイドのような感情を素直に表現出来る人間には伝わらない場合が多く、反感を買ってしまったりするのだ。

そんなクラトスは今も又こうして、勘違いされ易い者の知らぬ処で優しさを発揮させるのだった。






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