家族のカタチ
□1.始まりの神託
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まず気付いたのは、嫌に鼻につく錆びた鉄のような臭い。
次に悲鳴と、何かを引き裂いたような音。それに近付いていくにつれ、嫌な予感が膨れて鼓動が早くなる。
早く行かなければと脳が訴え、しかし本能は警告を鳴らす。それでも体は自然と動き、とても道とは言えるものではない林の中を懸命に走る。
あと少し、先に見える建物に向け向かう足が速くなる。そしてその足がようやく林を抜け、目的の場所にたどり着いた瞬間、眼前に広がる光景を目が捉えた。
地面は血が滲み赤黒く変色し、さっき聞こえた悲鳴の主であろう何十人もの兵士はその上に倒れ、まるで地獄とでも言うような惨状がそこにはあった。
だがその中で彼はただ一点のみを見つめていた。まるで周りの死体が見えていないかの様に。
兵士と違う服を着て倒れている一人の女性のみをその目に写して、彼は音のない声でその名前を叫んだ。