家族のカタチ
□2.すれ違いの邂逅
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「何なんだよあいつ!!」
バサバサバサ、と大声に驚いた鳥が一斉に空へ飛び立つ。
怒りが収まらない様子のロイドをジーニアスが宥めるのを見ながら、これじゃあどっちが年上かわからないなとカーノは溜め息をついた。
聖堂からイセリアに無事帰還したカーノ達3人は、着いて早々興奮冷めやらぬロイドに腕を引かれコレットの実家へと向かった。
何だ何だとされるがまま中に入ると、自分達より少し前に帰っていたコレット達が机を囲んでおり、コレットは体ごと、クラトスやファイドラはそのままの体制で視線だけこちらに寄越した。
恐らくは聖堂での報告や、これからの予定について話し合っていたのだろう。突然入ってきたロイドに面々は少なからず驚いた様だった。
そしてそんな相手の様子を気にする事無く、ロイドは言った。自分も世界再生の旅に連れていって欲しい、と。
その発言に素早く反応したのはカーノだった。隣に居たロイドの頭を平手で叩き、帰り道の間に終結した説教をもう一度再開させた。あれだけ言ったのにまだ解らないのか!!と人様の家という事も忘れて怒る。
だがそれでもめげないロイドは残るメンバーに懇願した。頼む、と彼にしては珍しく丁寧に。
しかしそんな努力も虚しく、ロイドの申し出はクラトスによって却下された。
「足手まといだ」とハッキリ言われ、沸々と怒りをたぎらせるロイド。それでも言い返そうとしないのは、先程力の差を見せつけられたからだろうか。
そうして結局打ち合わせがあるからと部屋を追い出され、今に至る。
「あのクラトスとかいう奴ムカつく…!!」と怒りを露にするロイドを尻目に、カーノは内心安堵していた。ロイドには悪いが、クラトスが居てくれて助かったと思う。自分1人ならこいつを止められなかったかもしれない。
「ロイドー!!ジーニアスー!!カーノさーん!!」
と、突然後ろから慌ただしい声と共にコレットが飛び出してきて、3人一緒に振り返る。
かなり急いで来たらしく息を上げているその少女は、どうやら先程のロイドの様子を気にして追いかけてきたらしかった。
クラトスの厳しい物言いに、ロイドが機嫌を損ねていると思ったのだろう。大方外れではなかったその予想に、クラトスの代わりといった感じでコレットが謝罪を述べた。
そんなコレットにロイドが、「何でお前が謝るんだよ」とさっきまでの怒りを一旦収めて言うと、ジーニアスも「そーだよ、コレットが謝ることじゃないよ!」と賛同した。するとそれに対してコレットはまた謝ってしまい、堂々巡りになりそうだと思ったカーノは助け船を出すべく口を開いた。
「そういえばジーニアス、何か渡すものがあるって言ってなかったか?」
「あ、そうそう!!」
渡しそびれるところだったよ、と懐から何やらごそごそと取り出す。
それは綺麗にラッピングされた小包で、それをそのままコレットに手渡した。
それをきょとん、として受けとるコレットに、ジーニアスが心を込めて言った。
「お誕生日おめでとう!!」
その言葉に、コレットは今渡されたものが自分へのプレゼントなのだと気付き、顔を綻ばせた。
「俺からも、誕生日おめでとう。
でも…ごめんな、俺知らなくて、何も用意してないんだ。」
喜ぶコレットに面目なさそうに謝ると、コレットは笑顔のまま首を横に振った。その言葉だけで十分です、と。
「…で、ロイドは?」
自分の用事を済ませたジーニアスが隣に立つロイドに問うと、ロイドは顔色を悪くしながら目を反らした。それを見たカーノはまさか、といった顔で弟を見る。それは流石に不味いだろう。
「まっさか、忘れてたりして―…」
「そっ、そんなことねーよ!!
あとちょっとで完成なんだ!明日旅立つ前に渡すからさ!!」
ジーニアスに指摘されあからさまに動揺したロイドに、カーノは目を覆いたくなった。
自分もプレゼントを用意していなかった手前強くは言えないが、自分から貰うのとロイドから貰うのとでは天と地程の差がある筈だ。
だがそれでもコレットは気にしていないといった様子で「嬉しい!!」と答え、明日の出発前に渡すと言うロイドの言葉に頷いたのだった。