へた リア短文

□雨天
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 冷たい雨が降り続く。
 勝者も敗者もない戦場にも等しく降りしきる。
 一体誰を責めようか。
 一体誰を責めようか。

「本気で言っているの!?」
「あぁ、俺はいつだって本気さ」
「だって、ここまで育ててくれたのに!」
「彼は支配したいだけだよ。もううんざりだ。君もそう思うだろ?」
「え…僕は…」

 時は1775年アメリカ大陸。二人の張りつめた細い糸が切れた。お互い危うい均衡の上に立っている事は自覚できていたが、どうする事もできずにいた。
 それが一発の銃声で脆くも崩れた。
 始まってしまったからには後には引けない。いや、引くような二人ではない。現に今一方のアルフレッドは頬を紅潮させていきりたっている。
『はぁ、どうしたものか…』
 マシューは心の中で小さく溜め息をついた。
「このままじゃ、アーサーさんも黙ってはいないよなぁ」
 心の呟きが言葉として出てしまったらしい。
「そりゃそうさ!力で押さえつけようとするに決まっている!こうなったらとことん戦うぞ!」
 それに答えたアルは、拳を振り上げて今にも駆け出して行きそうだ。
 こうなると止められないのを、彼の性格上すぐに予想できる事だった
『僕は嫌だなぁ』
 アルとも、アーサーさんとも戦うのは。

 元々マシューとアルは別々の親に育てられていた。マシューはフランシス、アルはアーサーだった。
 マシューがいた土地は広く、そして寒い。そこは幼いマシューが一人でいるにはあまりにも寂しい所だった。
 遊び友達が欲しかったし、そして隣には年が近い子が一人でいるのは知っていたので、当然の様にその子と仲良くなれたら…と思っていた。
 しかし育ての親同士が大変仲が悪く、気軽に遊びに行けるような雰囲気ではなかった。
 子供心にも、早く仲直りして欲しいと常に思っていたが、そんなマシューの願いとは裏腹に、親同士の喧嘩はますます激しくなっていった。
 そして、ある日アーサーがマシューを勝ち取った。
 もっとも、その時には既にマシューにはどちらが勝ってもよくなっており、早く喧嘩が終わってアルと遊べるようになりたかった。
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