へた リア短文
□願い
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淋しいなぁ。
最近誰も遊んでくれないからなぁ。
お兄ちゃんも、たまに来るお客さんも無視するし。
ずっとこうなのかなぁ…。
いつも住んでいる家が一気に様変わりを始めたのは何時からだったか。
日の当たる縁側でのんびりとお茶を飲んでいたお兄ちゃんが、風変わりな着物を着て、ほとんど家に居なくなった。そして、少しずつ遊んでくれなくなったばかりか、お喋りすらしなくなっていった。
「ついでに目も合わなくなっちゃったし」
はぁ、と今日も一人になってしまった縁側に座っている子供…座敷童は幼い顔立ちに似合わない、深い溜め息を漏らした。
この前、別れの挨拶に来た御狐様も『もうかなわん』って言ってこの地を去っていったばかりだ。最も、挨拶されたお兄ちゃんは知らん顔だったが。
「御狐様のおじちゃん、かわいそうだったなぁ」
でもおじちゃんはまだいいよ。
そっと見上げる。そこには古いが太く、がっしりとした梁が重い屋根瓦を支えていた。
「私は家に付くモノだから…」
同じく家から離れられない家鳴りが顔を出してこちらを伺っている。家鳴りも随分数が減り、今又少なくなった気がする。
こうして、少しずつ、しかし確実に友人が去って、消えていっていた。
「おー、ここが本田の家か」
ある日、知らない人の声がした。またお兄ちゃん宅にお客さんが来たらしい。
姿が見えてもらえなくなって久しく、その度に淋しい思いをしたが、どんな人が来たのかはやはり興味があったし、時々物音を立てて驚かすのも楽しかったので、お出迎えくらいは今でもしている。ひょっとしたら今日のお客さんは見てくれるのかも…という小さな期待を持ちながら。
それに最近は、目や髪、肌の色が変な人たちが来るようになって、初めは恐かったけど、お兄ちゃんと親しそうに話をしているから悪い人ではないと思うので、じきに見ているのが楽しくなってきていた。
今日来た人は、黄色い髪に緑の目をした白い男の人だった。物珍しそうに周りを忙しなく眺めている姿がなんとも可笑しい。
座敷童はいつものように玄関でお出迎えをした。…たとえ見られなくても可愛らしく、ちょこんと笑って。
「何もない所ですが、どうぞお寛ぎください」
お兄ちゃんは相変わらず誰も居ないかのように振る舞っている。
「んじゃ、遠慮なく邪魔するぜ…ってアレ?」
あれ?
瞬間、座敷童は踵を返して奥の間へ駆け込んでしまった。