SS・文

□欠けているもの
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スクリーン1

月と星の光に導かれ
私は青銀に輝く野原に来た。
そこはとても清くて純粋だった。
そこを一歩踏み出し歩いていった。
ふっと顔を上げた。
そこには醜い異形のモノがいた。
一瞬逃げ出しそうになった。
でも留まった。
ただじっと見つめていた。
…ダレ?
醜い異形のモノが言ってきた。
…ソコニ イルノ、ダレ?
また言った。
しかし何も答えなかった。
そのうち異形のモノはうずくまった。
それでもただ見つめている。
大丈夫?
ふっとそう聞いた。
なぜなら異形のモノは
小さくうずくまり消えそうだったから。
醜くて恐いけど
何故かそう聞いていた。
顔を上げてみたら?
キライダカラ。
それが答えだった。
何を?
スベテヲ。
なんで?
…イバショガ ナイカラ
その先は何も言わなかった。
気が付けば肩に手を置いていた。
…コワクナイ?

また何も言わなかった。
一緒に探しに行こう。
代わりにそう言った。
異形のモノは驚いて私を見た。
その目は真っ赤でチラチラと光っていた。
まるで水の中で燃える火みたい。
綺麗だった。
手を差し伸べると
震える手で握ってきた。
力を込めて立ち上がらせ
私たち二人は
青銀の野原を歩いて行った。
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