へた リア短文
□冬に咲く花
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「うっわー、キレイだなぁ!」
ここまで来れたのは誰のおかげだ。
何か皮肉でも言おうとするが、
「おい、フランシス!すっげーキレイだぞ!」
その笑顔は反則だろう。何も言えなくなる。
何度目かの溜め息をつく俺に気付かず、奴は初めて春を迎えたかの様な表情で唯一の色、ヒースの花を見つめている。
全く、こいつは、人の苦労も知らないで…。
それでもどれどれと、俺も覗いてみる。
…なんだ、普通の色じゃないか。
つまり、俺の苦労は無駄なモノになったわけだったはずだが。
「なー、冬でも咲くのって凄いな!な!?」
こんな色のヒース、いつも見ているだろに、初めて見るようにはしゃいでいる。
その様子がなんとも面白かった。
まぁ、今回はこれで勘弁してやるか。次はもっと厳しくしてやる。
全く、兄ちゃんは辛いなぁ。
本日一番大きな溜め息を空に向かってついた。
でも、悪くはないな。
うん、悪くは、ない。