へた リア短文
□雨天
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ようやく自分に兄弟ができる。このことだけでも夜は眠れない程嬉しかったし、会える日のことを思っては南の方角をじっと見つめていた。
それに実際に会ったアーサーは、フランシスが言う程の悪い人ではなく、言葉遣いや態度はちょっと恐かったが慣れればそんなに気にならなくて、思ったよりも優しい人だった。フランシスから離れるのは少し悲しかったが、この新しい親も悪くなさそうと思った。ちょっとアルに贔屓過ぎる感があったが、それでもマシューはマシューなりに楽しく過ごせていた。
しかし、いつからだったか、アルがアーサーに対して楯突く様になったのは。そしてそれはすぐに不穏な空気を纏い始めた。
嫌な予感がする。
また一人になるのは嫌だった。
だが、マシューには、どうすることもできずに見守る事しかできなかった。
「ねぇ、アル、もう少し話し合ってみたら?」
アルに気圧されて、いつも小さい声が更に小さくくぐもる。
「彼は俺らの言葉に耳を貸さないさ。いい加減わかれよ。彼は君が思っている程優しくないよ」
「…聞く耳持たないのはお互い様だよ…」
そんなマシューの言葉は戦略を練り始めているアルには届かなかった。
「ねぇ、アル、もう一度考えて?今、アーサーさんのとこは大変なんだよ?」
「だからって、こちらに何でも押し付けてくることはないだろ!?」
「アルのこと、すっごく可愛がってくれているじゃないか。アーサーさんもきっと辛い思いをして…」
「だからって、じっと耐えていろってことかい!?」
「いや、だから…」
何を言っても逆撫でするだけだった。
走り出したアルを止める力はマシューにはなかった。
「もういい。君には頼らない。俺は一人でも行くから」
そう言って会合へ向かう彼を見送るしかなかった。
アルともアーサーとも戦いたくなかったマシューは中立でいようと思っていた。
しかし
「え!?アルが攻めてきた!?」
だって兄弟同士だった筈じゃないか…!
まさか自分がアルに攻め込まれるとは思っていなかった。
「…本っ当にアルは…!」
穏やかなマシューにとって珍しく歯ぎしりをする。
「もう、こうなったら僕はアーサーさんに付いてやる!」
そうはいってもマシューの力ではアルの軍を食い止めるのに精一杯で、アーサーを助ける事は難しかった。
そこにフランシスがアルに加勢してきた。