へた リア短文

□攻防
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 デンが凄みを効かせながら小石と声が来た方向を向いた。
「こ…ここは俺の国だ!出てけよ!」
 少し離れた草むらの中から声がする。まだあどけない声で、二人よりも年少というのが感じられた。
「こーごーにー、いるのは!だーれーだー!」
 一言一言力を込めながら近づくデンに怯えてか、草むらがガサガサ震えている。それでも逃げない様子に、正直ノルは感心した。いじめっ子モードになったデンは、ノルでも逃げようかと思うくらいの迫力があるのだ。
「こごだな!?」
 勝者の笑みを浮かべて草を除ける。そこには目にいっぱいの涙を浮かべて手足は震えているが、それでも目を反らさずにじっと睨みつけている子供かいた。
「!?こいは…」
 ノルはこの子供から発せられる、ある種の感覚に目を見張る。
「…もしかして、おめえ、こごの国だか?」
 それはデンも感じたらしい。そうだ、この感覚は俺らと同じ国の持つものだ。
「だから!出てけって行っているだろ!」
 呆然と見つめている二人に向け、子供は何かを投げつけてきた。そう気付いた時には遅く、放たれた土を顔面で受け止めてしまった二人は目を覆った。
「〜〜〜っのクソガギャァァァ!」
 土で目を潰されたデンが吠えるが、そうすぐには回復できない。その間に子供は逃げていっていた。

「覚えでいろ!次めっけただらだだじゃおがないからな!」
 その夜、腫れた目を冷やしつつも腹の中では煮えくり返っているデンを見つつ、ノルも子供のことを考えていた。
「きゃぁ、あんこ、あのわらしは…」
「あぁ、この国だな。あの小生意気な!」
「まだ、あんさ小さがたんだの」
 幼年と言っていいだろう。しかも自分らよりも年下だ。もっとも、だからと言ってどうもしないが。国が生まれ、すぐ消える。そんなことはいくらでもある。
 しかし………あの目。
 小さな顔にあった大きな瞳には、怒りや恐怖の混沌に隠れている何かを感じさせる。ほんの数秒しか見ていないのに、妙に脳裏に焼き付いて離れられないのが引っかかる。見えないくらいの小さな刺がチクリと刺さっているように。鬱陶しいが、それが何なのかはわからない。
 ただ一つ言えることは、豊かな土地は奪わなくては手に入らないことだ。その為にはあの目は忘れなくてはならない。

 見つけた集落を襲撃するのは、もはやお家芸かのように手慣れた行為になっていた。
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