*サクラ花火*
□長門の生き様
3ページ/4ページ
―…モクモクモク……
「なっ…なんだこの煙は!!!」
「か…火事だぁー!!!!!!逃げろーっっ!!!!」
「ごほっ!!ごほっ!!!」
小忠太の発煙筒であたりは煙でたちこめ、
大勢の隊士達が屯所から現れあたりは騒然となった。
総助と小忠太もその騒ぎにまぎれ、身を潜めた。
「一さん…様子見に行かなくて大丈夫ッスかね…?」
「…危なくなったらすぐ行く…。三人で牢に行くのは流石に目立ちすぎるからね…俺らは入り口で見張ろう。」
総助と小忠太が注意を引き付けている間に一は牢に潜入していた。
―…ドサッ…
「誰だ!?」
見張りの隊士を気絶させると、牢の陰から一が現れた。
「高砂…一…?!どうしてお前がここに…!!」
「お前を助けに来た。牢から出ろ長門。」
「…!!」
一の言葉を聞いて長門は一瞬驚いたが、ニコッと笑った。
「相変わらず…無茶苦茶するな…お前は…。まさか新撰組の屯所に新撰組隊士を助けに来るとはな…。」
「……そんなの関係あるか。お前は俺のダチだ。くそっ!!外れねぇ……!!」
「……!!!」
見張りの隊士は牢の鍵を所持してなく、一は外から鍵を無理矢理外そうとしていた。
―…ガチャガチャ…!!!!!
「無駄に頑丈な鍵付けやがって…もう頭きた。牢ごとたたっ斬ってやる!!!」
一が刀に手をかけようとすると、牢の中から長門が一の手を止めた。
「止めておけ…高砂…牢ごと斬ったりすれば確実に大勢の隊士がお前に気付く。そうすればお前とて生きては逃げれまい。」
「…長門。」
「俺は明日局中法度により切腹になる。」
「…!!なら…!!」
「私は新撰組を間違った方向から引き戻せなかった。」
一の言葉を遮るように長門は続けた。
「このままでは新撰組は時代の波に飲まれ、消えていくだろう。私は新撰組を、この国を愛している…だから甘んじて罰を受けるのだ。」
「……。」
「私の死で新撰組の方向性が変わり、無駄に命を落とす仲間が減るのであれば、この命など惜しくない。」
「……意味ねぇんだよ。」
「高砂?」
「…死んだら意味ねぇんだよ!!!死ぬ事で変える!?んなの都合のいい美談だ!!!!何も変わらねぇ!!変えたいなら…助けたいなら…地面這いずり回っても生きろ!!!!」
「……!!…お前達に…我々が敵わないわけだ…。」
「…?」
「お前達に日本の未来を…そして我が仲間を託す。」
「長州藩士に新撰組の奴等を頼むってか?お前も十分無茶苦茶だな。」
それを聞くと長門はハハッと笑った。
「しかしお前になら…託せる気がしたんだ。だから…私を助ける為にこんな所でみすみす命を落とすな。」
「同じ日本人同士、争うことのない世。期待しているぞ。」
そう言うと、長門は牢に置いてあった金板を壁に投げつけた。
―…ガシャーン!!!!!!!!
「何だ!!今の物音は!!」
「牢の方だ!!!」
「長門…てめぇ…」
「早く行け!!!!!!高砂一!!!!」
そう一喝すると、長門は笑顔を見せ、牢の奥に入っていった。
その笑顔は今までの悲しげな顔とは違う
とても穏やかな笑顔だった。
「一!!!!もう限界だ!!逃げるよ!!!!」
牢の外から総助の声と、刀がぶつかる音が響いた。
それを聞き、一は拳を握りしめ、長門の牢から離れた。
「頼んだぞ…高砂一…そして…ありがとう…。」
一人暗闇に佇む長門は
小さな牢の窓から
とても広い空を見た。
その空はとても綺麗で
自分の想いと祈り全てを
その空に託したのだった。
.