*サクラ花火*

□長門の生き様
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―…モクモクモク……






「なっ…なんだこの煙は!!!」



「か…火事だぁー!!!!!!逃げろーっっ!!!!」



「ごほっ!!ごほっ!!!」




小忠太の発煙筒であたりは煙でたちこめ、

大勢の隊士達が屯所から現れあたりは騒然となった。



総助と小忠太もその騒ぎにまぎれ、身を潜めた。



「一さん…様子見に行かなくて大丈夫ッスかね…?」


「…危なくなったらすぐ行く…。三人で牢に行くのは流石に目立ちすぎるからね…俺らは入り口で見張ろう。」






総助と小忠太が注意を引き付けている間に一は牢に潜入していた。







―…ドサッ…





「誰だ!?」





見張りの隊士を気絶させると、牢の陰から一が現れた。





「高砂…一…?!どうしてお前がここに…!!」




「お前を助けに来た。牢から出ろ長門。」



「…!!」




一の言葉を聞いて長門は一瞬驚いたが、ニコッと笑った。




「相変わらず…無茶苦茶するな…お前は…。まさか新撰組の屯所に新撰組隊士を助けに来るとはな…。」




「……そんなの関係あるか。お前は俺のダチだ。くそっ!!外れねぇ……!!」



「……!!!」



見張りの隊士は牢の鍵を所持してなく、一は外から鍵を無理矢理外そうとしていた。





―…ガチャガチャ…!!!!!





「無駄に頑丈な鍵付けやがって…もう頭きた。牢ごとたたっ斬ってやる!!!」



一が刀に手をかけようとすると、牢の中から長門が一の手を止めた。












「止めておけ…高砂…牢ごと斬ったりすれば確実に大勢の隊士がお前に気付く。そうすればお前とて生きては逃げれまい。」



「…長門。」









「俺は明日局中法度により切腹になる。」




「…!!なら…!!」

「私は新撰組を間違った方向から引き戻せなかった。」


一の言葉を遮るように長門は続けた。




「このままでは新撰組は時代の波に飲まれ、消えていくだろう。私は新撰組を、この国を愛している…だから甘んじて罰を受けるのだ。」


「……。」



「私の死で新撰組の方向性が変わり、無駄に命を落とす仲間が減るのであれば、この命など惜しくない。」







「……意味ねぇんだよ。」



「高砂?」






「…死んだら意味ねぇんだよ!!!死ぬ事で変える!?んなの都合のいい美談だ!!!!何も変わらねぇ!!変えたいなら…助けたいなら…地面這いずり回っても生きろ!!!!」




「……!!…お前達に…我々が敵わないわけだ…。」



「…?」





「お前達に日本の未来を…そして我が仲間を託す。」




「長州藩士に新撰組の奴等を頼むってか?お前も十分無茶苦茶だな。」



それを聞くと長門はハハッと笑った。




「しかしお前になら…託せる気がしたんだ。だから…私を助ける為にこんな所でみすみす命を落とすな。」


「同じ日本人同士、争うことのない世。期待しているぞ。」





そう言うと、長門は牢に置いてあった金板を壁に投げつけた。



―…ガシャーン!!!!!!!!



「何だ!!今の物音は!!」

「牢の方だ!!!」










「長門…てめぇ…」




「早く行け!!!!!!高砂一!!!!」




そう一喝すると、長門は笑顔を見せ、牢の奥に入っていった。







その笑顔は今までの悲しげな顔とは違う



とても穏やかな笑顔だった。











「一!!!!もう限界だ!!逃げるよ!!!!」



牢の外から総助の声と、刀がぶつかる音が響いた。



それを聞き、一は拳を握りしめ、長門の牢から離れた。
















「頼んだぞ…高砂一…そして…ありがとう…。」








一人暗闇に佇む長門は



小さな牢の窓から



とても広い空を見た。





その空はとても綺麗で




自分の想いと祈り全てを





その空に託したのだった。







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