サクラ花火短編集(大)

□【其ノ二】ご褒美
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「おかえりなさい、桜さん。」



『総助さん!!帰ってたんですね。すぐにご飯作りますので!!』





慌てて台所に向かう桜に不思議そうに総助が尋ねた。






「あれ?一が一緒に行ったんじゃなかったんですか?」



『あ、はい…それが…さっきまで一緒だったんですが…。』




「?」






家路についてから終始不機嫌そうだった一は、

家の前まで荷物を運び終わるとフラリといなくなってしまったのだった。






(はぁー…怒らせちゃったのかなぁー…。)





一人ため息をつく桜に、総助が優しく話しかけた。




「気にしなくていいですよ。一は気まぐれだからいつもフラッといなくなるんですから。」



『はい…そうですよね…!!』






そして、桜は一の事が気になりながらも夕食の支度に取り掛かった。




........................




―…ザー…






『今夜はもう…高砂さん帰ってこないのかな…。』






雨の落ちてきた夜空を見つめながら、

またひとつため息をつき桜は明かりを消した。













―…バタン!!ドサッ





『…えっ…き…きゃあああああっ!!!???』





突然体の上に何かが覆い被さり、桜が驚いて声をあげると、聞き覚えのある声が耳に入った。








「うるせー…。」








『へ…その声は…。』





暗がりに目を凝らすと、目の前には一の姿があった。




『た…たたた高砂さん…?部屋間違ってますよ!?も…もしくは酔って…ます…?』



「…酔ってねぇしましてや部屋も間違ってねぇ…。」










『へ…?』







「じっとしてろよ…桜…。」












『えっ…えええええ?!た…高砂さ…!!』






状況を飲み込めず慌てふためく桜を気にも止めず、一は桜の帯に手をかけた。







『たっ…高砂さん…!!ちょ…!!!』






「いーから黙ってじっとしてろ!!」






『……!!!』






(こ…これがきっと夜這いっていうやつなんだ…―!!!)





一の勢いに負けた桜は覚悟を決め、一の着物の裾をギュッと握った。




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