*サクラ花火短編集(小)*
□【其ノ八】牢獄に飛ぶ鳥
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二人はずっと牢越しに手を繋いだまま、色んな話をした。
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自分の生い立ちや夢、これからの日本についてなど沢山沢山。
そして朝日が登ろうとする頃、志乃がゆっくり喋り始めた。
「松山様…私、今日この獄から出ることになりました…。」
「えっ…!?ほ…本当ですか…?!それは…それは良かった…!!」
少し戸惑いながらも自分の事のように喜ぶ杉に、志乃も笑顔を見せた。
「もう…このように毎日一緒にはいれなくなりますが…松山様…お体お気をつけ下さいませ…!!そして、一日も早く松山様が獄から出られるよう…お祈りしております…!!」
またも涙を流す志乃に、杉は笑って言った。
「私もここから出たら一番に志乃さんに会いに行きます!!そうしたら…今度は牢越しではなく普通の家で…一緒に暮らしましょう?」
「松…山様…!!はい…お待ち申し上げております…!!」
涙を流しながら志乃が頷くと同時に、牢の扉が大きく音をたてて開いた。
そして入ってきた数人の看守は、志乃の牢の鍵を開け、志乃を連れ出した。
「志乃さん!!その時はどこに…どこに会いに伺えばいいですか…?」
牢の扉を出る寸前、杉が志乃に叫ぶと、志乃はニッコリ笑って答えた。
「守原峰まで…お願い致します…!!」
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志乃の笑顔はとても幸せそうで、見ているこっちが温かい気持ちになる、まるでひだまりの様な笑顔だった。
扉が閉まりきる最後の最後まで志乃に手を振り続けた杉の目からは、一筋の涙が溢れていた。
.......................
―二週間後―
「自宅謹慎…?」
志乃のいない牢での生活を続ける杉に、思わぬ吉報が舞い込んだ。
「ああ、今回もお咎め無しじゃ。今日引き渡しの使者が来るそうだから準備をしておくように。」
看守の言葉に小さくガッツポーズをした杉は、急いで牢を出る準備に取りかかった。
「志乃さん…!!思ったよりも早くまた会えそうですよ…!!」
杉は誰もいなくなっていた隣の牢にそう呟くと、いそいそと本を風呂敷に包んだ。
.......................
「皆さんありがとうございました〜!!また来ますね〜!!」
「もう来ちゃ駄目だって!!バカ!!」
呆れ顔の看守や囚人に見送られながら、杉は一月余りを過ごした獄を後にした。
「さて…少しくらい寄り道してもいいでしょう…看守さん、守原峰はどっちに行けば早いですかねぇ?」
杉は獄の門の番をしている看守に尋ねた。
「守原峰?それはこっちだな。でも守原峰なんて何しに行くんだ?さっさと自宅に帰れよ。」
「堅いこと言わないで下さいよ、用が済んだら謹慎します。でも守原峰なんて聞いたこと無いんですよねぇ…。遠いんですかね?」
不思議そうにする杉に、看守が答えた。
「そりゃそうだろうよ、あそこは罪人が埋葬されるとこだからな、普通みんな近づかねぇよ。」
「え…?ああ…そうなんですね、でもその近くに民家か寺とかもあるんですよね?」
「だからあそこにゃ誰も近づかねぇって!!埋葬場所以外は山しかねぇよ。」
「え…?」
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