サクラ花火短編集(大)

□【其ノ十一】千鈴妓唄
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「いやあ…まさか知り合いだったとはびっくりしたぜ。」



「びっくりしたのは俺の方ッスよ〜!!」




「ふふ…私もびっくりしました…お名前が違ったので私の勘違いかと思っていたので…でも…。」




「?」




「その口癖は変わらずいらっしゃるのですね…。」




そう言って笑う千鈴に、小忠太と神太もケタケタと大笑いした。





「でもまさか吉田栄之助の妹だとはな〜!!俺はあんま喋ったことねえけど…てかあんま喋んねえ奴だよな?確か。」



「まあ無口でしたけど、すごく優しくて絵の上手い人でしたよ…ね、鈴ちゃん。」





小忠太の言葉に鈴は嬉しそうに頷いた。





「そういえば俺、栄之助さんに絵描いてもらった時に、小枝に描かれた事あるッスよ〜!!」



「その絵…私も見たことあります!!高砂さんが牛で才原さんが坊主でしたよね。」




「一が牛で総助が坊主でお前が枝?中々ぴったりじゃねえか!!」




ゲラゲラ笑う神太に小忠太は後ろ手に蹴りを入れた。



「でも小忠太さんが枝な理由…兄は"今はまだ枝だけど、この先大きな花を咲かせるだろうから"と言っていたんですよ…。」






「え…?栄之助さんが…そんなことを…?」



「お前の将来性は見抜いてたんだなぁ…すげえじゃねえか。」




「…栄之助さん。」




鈴から初めて聞いた栄之助の本音に、小忠太の瞳にはうっすら涙がにじんでいた。








「さて…と…じゃあ俺は先に帰るとするかな。」



「え?なら俺も…」



そう言って立ち上がろうとした小忠太を小突きながら神太は言った。




「積もる話もあるだろーからって気ぃ利かせてんだよ!!ゆっくり話でもしてろよ。」


「神太さん…。」




「最後に聞きてぇんだけど…その栄之助からもらった簪ってのは…どこにあんだ?」










襖に手をかけた神太が二人に尋ねると、二人は顔を見合わせて笑った。




「あるじゃないッスか!!ここに、ね☆」


「はい…!!」










「……はいはいごちそうさまでした。邪魔者は退散しますよ、じゃな。」




そう言うと、仲睦まじく笑い合う二人を部屋に残し、神太は部屋を後にした。





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