*サクラ花火短編集(小)*

□【其ノ五】僧職系男子の憂鬱
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―…フワッ…





「?!」



『え…ひ…火の玉!??』





茂みに隠れる二人の目に映ったのは、墓地でぼんやりと光る火の玉だった。





『しっ…ししししし親瑛さんひのたまがっ…!!!!』



―…ザッ



『親瑛さん?』




「せっかく邪魔(侑)も入らずいい雰囲気に持ってってたってのに……打ち落としてやらあ…。」



『う…打ち落とっ…?!』





いいとこを邪魔され完全にキレた親瑛は、金属バット片手に火の玉の方へと近づいていった。





「うちの墓地じゃなくてよその墓地にいきやがれ!!!!!客(檀家)が減るだろうがああああ!!!!!!」











(なんか滅茶苦茶バチあたりな事言ってるーーー!!!)






―…ガシャン!!




「は…?」


「ぎゃああああ!!ご…ごめんなさいぃぃぃ!!!!!」




親瑛が火の玉めがけてバットを降り下ろした瞬間、

叫び声と共に沢山の小さな影が一目散に逃げ出した。




『え…こ…子供…?』



「火の玉と叫び声の正体はこいつらか。」




親瑛はそう言うと、子供達が落としていった蝋燭の火を消した。





「ったく、人ん家の墓で肝試しするたぁバチあたりな奴等だ。」




(さっき親瑛さんがしようとしてた事も十分バチ当たりそうなんですが…。)




「なんだよ。」



『いえ…。』





「ははっ…。」



『親瑛さん?』





突然笑って夜空を見上げた親瑛を、桜は不思議そうに見た。





「空見てみ。」



『え…?…わぁ!!』




親瑛に言われて見上げた空は一面沢山の星で覆われ、息をのむ程の美しさだった。





「今度こそ…二人でどっか出掛けような…?」





『…はいっ…!!』














親瑛の言葉に桜は笑顔で頷き、

一と総助の墓のある高台で、二人は満天の空を見上げて笑い合った。



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