サクラ花火短編集(大)
□【其ノ七】嵐の前ぶれ
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「……まあもうこんな昔の話は止め止め!!歳を取ると昔話ばかりでいかんのう!!」
そう言うと、おじいさんは持っていたお酒をぐいっと飲み干した。
「桜さーん!!絡まれてなーい?大丈夫?」
『侑さん!!』
侑はニコッと笑うと、桜の隣に腰を下ろした。
『侑さん…ものすごくお酒飲んでます?』
「えー?そんなに飲んでませんよー???」
(語尾が…これは酔ってる。)
「侑と桜ちゃんは仲がええのう、美男美女でお似合いじゃ!!」
「ヘヘ〜そうでしょ〜?」
「でも親瑛も桜ちゃんのこと気に入っとるみたいやけど、実際のとこどうなっとるんじゃ?」
「気になるなぁ!!桜ちゃんはどっちが好きなんや!?」
『え…あ…いや…その…。』
「もー桜さん困ってるでしょ〜やめてくださいよー。」
「いや、侑もこの際はっきり聞いといた方がええって!!どうなんじゃ〜??」
「そうじゃ、言ってまえ言ってまえ♪」
『えー…と…はは。』
「ちょっと、おいちゃん達悪ふざけもいい加減にするッスよ〜!!桜さん困ってるじゃないッスか〜…」
俊輔が困っている桜を見かねて助け舟を出した瞬間、
侑は持っている缶を勢いよく振り下ろした。
―…ガシャン!!!!
「…ー!?」
「…やめて下さい。」
突然声を荒げた侑に、周囲の者は皆驚き口をつぐんだ。
『侑…さん?』
「そんな事…聞きたくありません。」
侑は小さな声でそう呟くと、持っていたビールの缶を一気に飲み干しいつもの笑顔でニコッと笑った。
「………あれ?今…俺何か言いました?なんか酔いが回っちゃったみたいです〜。」
「ああもうお前一気に飲み過ぎなんじゃよ〜!!びっくりしたわ〜!!」
「あはは!!すいませ〜ん!!あ、そう言えばじいちゃんこの間のお祭りの話なんだけどさ〜…」
「ん?ああ!!あれはのう…」
―…ガヤガヤ…
(…侑さん…?)
「…。」
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