*サクラ花火短編集(小)*

□【其ノ八】大切な日々
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「ねぇ親瑛…総助の墓の下には本当に骨が入ってるんだよね?」





突然の侑の突拍子もない質問に、親瑛は不思議そうに答えた。




「いくら住職とはいえ墓暴いた事はねぇが…入ってるんじゃねえか?何でだよ。」



「……最近分からなくなるんだ、自分が総助なのか侑なのか。」




「……。」



侑は空を仰ぎながらポツリポツリと呟いた。




「何てゆーか…二人分の記憶が俺の中でごっちゃになって、俺の今の感情も意思も、どっちのものなのか分からなくなる。」




「……。」




「結局さ、"侑"として生きてきたけど実際はそんな奴初めからいなくて、ずっと"総助"だっただけなんじゃないか…とかね。」




侑がそう言って困ったように笑うと、それまで黙って聞いていた親瑛が口を開いた。






「侑、お前のダメなとこは何でも考えすぎてしょい込んじまうとこだ。それは確かに総助の時から何も変わっちゃいねーな。」




「……。」




「でもな…総助は150年前の今日、俺達を守って死んだんだ…。それは間違いない事なんだよ。お前はお前だ、侑。」










「親瑛………何か本当のお坊さんみたいだよ?」









「はたくぞ貴様。」




「うそうそ。…ありがとう……。」





侑は親瑛に礼を言うと、じっと押し黙って空を見上げ続けていた。








「…やっぱり適わないなぁ…………ん?」





ふと横に侑が目をやると、親瑛は桜に手を回し幸せそうに寝息を立てていた。





ー…カチーン


(…前言撤回!!)




親瑛の手を桜から払いのけると、侑も桜の隣でウトウトと眠りについた。










....................



ー…ホー…ホー…







『へぇっくしゅん!!!!!!………へ?わあああもう夜になってますよ!?』



「ん…?うわ!!何か寒いと思った…って体痛っ!!!」




「……ぐー。」




「親瑛寝たフリすんな起きろっ!!焼き肉っ!!」





「ぐう。」














【其ノ八】大切な日々 -END-
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