*サクラ花火短編集(小)*
□【其ノ九】消えない鎖
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ー…ブロロロロロロ
『あの…親瑛さん…侑さんは誰の法事に行こうとしていたんですか…?』
「今日と明日ある法事全部。」
『え…?』
訳が分からないと言った顔の桜に、親瑛は表情を変えずに続けた。
「…6年前、このへんで大規模な火事があってな。」
『火事…ですか。』
「今日明日行く法事のほとんどが、その時亡くなった人なんだよ。」
『…それと侑さんに…何の関係が…?』
桜の問いに、親瑛は一旦間をおいて答えた。
「関係ねえよ。あってたまるか。」
![](http://id42.fm-p.jp/data/219/rrrrruyo/pri/342.jpg)
『…?』
そう言うと、親瑛はポツリポツリと話し始めた。
六年前にこの地で起きた、火事の事を…。
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今から遡ること6年前。
親瑛と侑はこの地を離れそれぞれ仕事に就いていた。
侑はこの年研修医になり、その日は久しぶりの休みに地元に戻って来ていた。
「研修医昇進、おめでとおお!!!カンパーイ!!」
![](http://id42.fm-p.jp/data/219/rrrrruyo/pri/343.jpg)
「ありがとう…!!でも昇進って何なの。」
「んな細かい事言うなよ飲めって!!」
久しぶりに会った地元の友人たちが、侑の医者としての門出を祝う為集まってくれていた。
「これで才原医院も跡取りが出来て安心だな〜!!」
「安心なのは俺らもだろ、この近くは病院そこしかねえもんなあ。」
「どんだけ田舎なんだよな、まったく!!」
そう言って笑い合う友人達に、侑も頬を緩めた。
「でも侑は救命医になりたいって言ってたから継がねぇんじゃなかったの?」
「うん…最初は市内の病院で働くよ、うちの病院は父さんがいるし当分は継ぐとかそんな話はないかな。夢も叶えたいしね。」
「でもホント凄いよ…ガキの頃から医者になりたいって、本当になっちまうんだから…これからも頑張れよ!!」
「うん…ありがとう…!!」
そう言うと侑は照れくさそうに笑い、持っていたグラスの酒を飲んだ。
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