*サクラ花火*
□涛次郎の恋
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ー…ザク…ザク…
「わしゃ疋田屋の芸妓に惚れとるんじゃ…じゃがわしゃうまく話せんくてのう…。そやから一に手伝うてもろうとったんじゃ…こいつ、口だけは上手いじゃろう?」
涛次郎に言われるがまま外に連れだされた桜は、その道中涛次郎の恋愛話に耳を傾けていた。
『それは確かに…口だけは上手いですよね。』
「なんか俺悪口言われてねぇ?」
「で…その芸妓は楓と言うんじゃが、楓が女子の友達が欲しい言うとったんぜよ。」
『なるほど…。それで私を…』
「頼まれてくれるか桜!?」
芸妓など会ったこともない桜だったが、必死な表情で懇願する涛次郎に負けた桜は二人と共に疋田屋へと向かう事になった。
街はすっかり日が落ちゆらゆらと明かりが灯り始めた頃、三人は一件の揚屋へと足を進めたのだった。
『ここが疋田屋さんですか…なんか緊張してきました…。』
「緊張するのはわしぜよ〜!!」
心配そうな涛次郎と桜をよそに、一はさくさくと座敷に入っていった。
するとそこにはきれいな簪と着物に身を包んだ一人の芸妓が頭を下げ三人を出迎えていた。
「一さんに涛次郎さん、お待ちしておりました。そちらの可愛いお嬢さんは初めてですね。」
「俺のコレよ♪」
『…。』(また適当な事言ってる…)
「あら、一さんにこんないい人がおるやなんて知りませんでしたなぁ。初めまして。私は"楓"と申します。」
『あ、はい!!初めまして!!藤堂桜と申します!!』
そう言うと楓はニッコリ笑い、桜も綺麗な楓に照れながらもニコッと笑顔を見せた。そうして楓は皆にお酒をつぎ始めた。
「あ…どうも…すまんのう。」
『……。』
(涛次郎さん…顔真っ赤だなあ…。)
女の桜でさえ思わず見とれてしまう、見た目も所作も綺麗な楓。
そんな楓に緊張しきりで、当の涛次郎は恥ずかしさのあまり顔を俯けるばかりで、ほとんど楓と喋れずにいたのだった。
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