*サクラ花火*
□命の重さ(前編)
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ー…ガバッ!!!!
『今動いた気がする!!!』
「ほんに動いたぜよ!!かわええのう〜」
あれから4ヶ月が経ち、桜と涛次郎は楓のお腹に手を当てて赤ちゃんの動きに一喜一憂していた。
「ふふ…二人に挨拶しとるんやなぁ。」
「体調に変わりなければ大丈夫ですけど、あんまり無理しないようにして下さいね、楓さん。」
「はい…!!いつもありがとうございます総助さん。」
そう言って幸せそうな笑顔を見せた楓に、総助も医療道具を片付けながらニッコリ笑った。
こうして4ヶ月間、総助は暇を見つけては楓の往診に訪れ、桜も総助と一緒に楓に会いに行っていた。
日に日に実感する赤ん坊の成長に、桜も自分のことのように毎日その成長を楽しみにしていたのだった。
『赤ちゃん早く会いたいなぁ〜…。』
「わしもじゃ!!そげんに元気ならもう出てきてもいいぜよ〜!!」
「イヤ、あと最低でも2ヶ月は待ってね。」
「……だそうじゃ!!怖い先生がまだダメじゃと〜!!聞こえたかのう?」
「涛次郎さん、冗談抜きで早くに産まれたら母子共に命の危険だってあるんですからね!!」
「分かっとる分かっとる〜!!」
心配する総助をよそに、舞い上がっている涛次郎。
こんな調子で毎月の往診も過ぎていき、楓の赤ちゃんも順調に大きくなっていった。
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ー…ザク…ザク…
日も暮れかかった往診の帰り道、桜は気になっていた事を総助に訪ねてみた。
『あの…身請金って…結局どうなったんですか…?』
「ああ。一がお金払ってあげたみたいだよ。」
『払ってあげたって…そんな大金どこから…!?』
「詳しくは話したがらないから聞いてないけど、元々一の家はお金持ちだからね。それなりの人脈はあったんじゃないのかな。」
『そうだったんですか…じゃあ高砂さんの家の人が出してくれたんですね…。』
「あ、いや…一の家族はもう…」
『え…?』
しまった。という顔をしながら口ごもった総助を見て、これ以上聞かない方がいい事なのだ桜は気付いた。
総助は気まずくなったその場の雰囲気を取り繕うようにハハと笑うと、口に手を当てて言った。
「一に家族の話題は禁句だから、今の話は聞かなかった事に…。」
『あ、はい…。』
「ありがとうございます。」
きっと自分が知らない二人の過去はまだまだたくさんあるのだろう。
桜は心の片隅で一の事が気になりながら、総助と家路を急いだのだった。
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