*サクラ花火*
□命の重さ(前編)
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ー…ドンドンドンッ
『はい、お待たせいたしまし…』
「斎藤寛治先生はおられるか。」
玄関先でけたたましく鳴り響いた戸を叩く音に桜が慌てて駆け寄ると、
玄関先に立っていた役人風の男は慌てたような様子で聞きなれない名前を口にした。
『斎藤…?えっと…間違いでは…ムグッ!!!?』
「はい。います。何か?」
男性に桜が対応をしていると、突然一が桜の口を手で抑えて答えた。
一は当然のように男の話を聞くと、一通の書状を受け取った。
「これをお渡し下され。」
「はい、どーも。」
ー…バタン!!
『ぷはっ!!!!い…一体誰の事なんですか…?』
「総助の偽名、斎藤寛治で医者やってんだあいつは。"才原総助"が長州藩士ってのは幕府も名前だけは知ってるからな。」
『そう…だったんですか…。』
「ま、バレるとややこしいからな。桜、顔赤いぞ☆」
『なっ…き…気のせいですっ!!!』
いつものように桜をからかいケタケタと笑うと、一は文を総助に持って行った。
一とは疋田屋のあれから、特に何かあった訳でもない。いつもからかわれてばかりだった。
(からかわれてばっかりだな…もう…。)
意識しないようにすればするほど無意識のうちに、一の事が気になっている。
桜はそれがなんだかもどかしくて、切なかった。
『…。』
まだドキドキと早く脈打つ心臓を押さえると、桜も二人の待つ部屋へと戻って行った。
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