*サクラ花火*

□兄
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「総助、ちょっといいか。」




藩主と楢崎へ報告も済み、帰ろうとしていた総助を楢崎が呼び止めた。





「なんでしょう。」


「春就の事なのだが…。」




楢崎の口から出たその名前を聞いた瞬間、総助の顔が曇った。





「……兄が…どうかしましたか…?」


「お前…あいつの行方を追って色々画策していただろう?もうあいつを探すのは止めておけ。」


「…楢崎さんは何でも知ってるんですね。でももう居場所は分かっていますから…長崎でしょう?」





総助の言葉に、今度は楢崎が顔をしかめると、ハアと溜め息をついた。



総助の兄、春就は総助の兄であり楢崎の幼なじみでもあった。

昔から変わり者で曲者の春就に、楢崎はいつも頭を抱えていたのだ。





「……ならなおさらだ。あいつの所には絶対行くな。春就はどうも長崎奉行所に目を付けられている。」




「…!!」




「いいか総助、春就の近くには行くな。これで終わりにしろ。ただでさえお前と春就は…」

「…ご心配ありがとうございます…。楢崎さん。」




楢崎の言葉を遮るように礼を言うと、軽く会釈をして総助はその場を去った。





「総助…。」








.......................








―…バタバタバタバタッ!!!




「いちさぁぁぁぁん!!!!!」



朝早くに一逹が泊まっている家に小忠太が大慌てで現れ、まだ寝ていた一の布団をはいだ。






―ガバッ!!!!






『!!!????』



「あ…あれ…?桜さ…」



『きぃゃあああああああ!!!!!!!』






―バキッッ!!!!!!





「……何してんの?小忠太…。」





隣の部屋から現れた一があきれた顔で立っていた。




「へ…部屋…間違えたッス…うっ…」


『こっ…小忠太さん!!??ご…ごめんなさいい!!!私、思いっきり殴…!!!小忠太さん〜!!!!!』





....................









「で、何なんだよ。」



「そっ…総助さんが…朝起きたらいなくなっちゃってて…!!!」


「はあ?!」




突然の思いもよらない言葉に二人が驚くと、小忠太は更に慌てた様子で続けた。




「なんか楢崎さんが昨日、総助さんのお兄さんが長崎にいて奉行所に追われてるって話をしたみたいで…それが原因かと…。」



『お兄さん…?』


「あんの馬鹿が!!!!」




一はそう怒鳴ると、その勢いのまま部屋を飛び出した。




「桜!!総助を追うぞ!!すぐに準備しろ!!」

『は…はいっ!!』



「じゃ…じゃあ俺は…楢崎さんに伝えときまっす!!!

長崎への道は船着き場までとりあえずは一本道です!!一さんの馬ならすぐに追い付けるかと…!!」




「わかった!!ありがとな!!小忠太!!」







そうして小忠太に礼を言うと、一と桜は馬に乗り、すぐさま総助の後を追った。




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