*サクラ花火*
□総助の十字架
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「……。」
『あ、お気づきになりましたか?』
「ここは……………これは?」
目が覚めた春就の手首には紐が結んであった。
「また逃げられると面倒だからな。」
「兄さん。いちいち逃げないで話をさせて下さい…。だいたい前だってそうやって逃げていなくなって、その前だって……」
「総助…本当に口うるさくなりましたね。」
『…。』
(ほ…本当にちょっと変わった人だなぁ…)
「兄さん。いい加減長州に戻りなよ!!突然いなくなったかと思えば…奉行所に目をつけられてるなんて…。父さんも母さんも…兄さんの事、最後まで心配してたんだよ…。」
「総助………一人にして悪かったな…。」
「…!!じゃあ…戻って…」
「断る☆」
「……。」
それから、春就は真面目な顔で話し始めた。
「私がいなくなったら困る人が大勢いるんです。私が世話をしている孤児の子供逹、そしてかくまっている隠れキリシタンの村人逹。」
「…まだキリスト教の教えなんて事を…。そんなものの為に命をかけるなんて…馬鹿げてる!!」
「総助。口を慎め。」
「兄さん…。」
「今、この町には教会が建設されている。奉行所も認めてくれているな。だからもう、大丈夫なんだよ…総助。イエス様は必ず私達をお救い下さるのだから。」
―…パサッ
「ほらね?」
そう言って微笑んだ春就の、手に結んであった紐ははらりとほどけていた。
「じゃっ!!私は夕飯の支度があるのでこれで☆」
「あああもう!!春就!!それはキリストのお陰じゃねー!!お前が縄脱け上手いだけだ!!待てコラ!!!!」
「はあ…兄さんに紐ごときじゃ甘かったか……吊るされても逃げてたもんな…。」
『つ…吊る…?!』
(一体何をやらかしてたんだ…)
「それにしても兄さんが言ってた、奉行所が認めた教会って一体…。」
「そんなのあり得ねぇと思うんだがな…一応調べてみるか…。」
「ああ…。」
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