*サクラ花火*
□灯籠流し
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(このへんでいいか…。)
川原に着くと、一は夕日で紅く色づいた水面に灯籠を流した。
そして流れていく灯籠を見つめながら一人、手を合わせた。
「灯籠流しか。」
「!!…長門…」
「こんなこと出来た義理じゃないが手を…合わせさせてはもらえないだろうか…。」
「…勝手にしろ。」
一がそう言うと、長門は灯籠に向かって手を合わせた。
「池田屋で亡くなった藩士の為であろう…?」
「ああ…。まあ…同郷の仲間も何人かいたからな…。」
「すまなかった…などと言えた義理ではないが、本当に…我が新撰組は人の命を奪いすぎた…。何度詫びても足りぬな…。」
居たたまれない顔をする長門に一は灯籠を見つめながら言った。
「……それは俺達だって同じだ。沢山の人間を斬ったし、命を奪った。あいつらだってそうだ。」
「……。」
「だが斬らなきゃ斬られちまう時代に俺らは生きてる。俺らが死んでった奴らに出来ることは祈る事ぐらいじゃねぇか。」
「そうだな…。」
「にしてもお前が新撰組だったとはな…長門。俺の事、捕まえなくていいのか?」
そう言って一がニッと笑うと、長門の表情も少し緩んだ。
「俺は長州藩士を賊軍とは思っていない。」
「!!」
「新撰組も長州藩もやり方は違えど国を思っての行動だ。それをただのテロリストのように捉える幕府も今の新撰組も、俺は納得いかない。」
「お前…」
「長州藩士と新撰組、一緒に酒でも飲み交わせればいいんだがな。」
「ははっ!!なら俺が代表で飲みに行ってやろうか!?」
一がそう言うと、二人は笑い合った。
「…だがお互い仲間を斬られ、大切な物を奪われた。そうなるともう、仇討ちや憎しみの連鎖が止まらなくなる。そうなった今では私の考えなど理解されんのだろうな…。」
「…この世界がなくなるまでその連鎖が続くとは限らねぇぞ。」
ニッと笑みを浮かべながら言う一に、驚いた顔で長門は言った。
「しかしそんな事…。」
「長州藩ナメんなよ。お前が助けた馬鹿とその仲間が新しい世を作ってくれるんだとよ。」
「あの少年か…そうか…それは頼もしいな…!!そうなったら我が隊も手伝わせて欲しいものだ。」
「はは!!頼むな!!……長門…新撰組にもお前みたいな奴がいるって分かってよかったよ。」
「俺も…お前と話せて良かった。ありがとう……。」
それを聞いて一は少し笑い、その場を後にした。
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―…ガサッ
「……。」
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