*サクラ花火*

□一の過去
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今から遡ること12年前…




一は長州の山里にある祖父、高砂玄一の家に預けられていた。







「じいちゃん!!今日は川でニシンいっぱい捕ったんじゃ!!焼いて食おう!!」




「おお!!でかしたじゃねぇかクソガキ!!!!」










多少なりとも口も素行も悪い祖父から剣術や体術を学びながらの生活は、

一にとっては楽しくてしょうがないものだった。





そんな生活を幼い頃から続けていた一にある知らせが入った。





「父上と…母上が…?」




「今更お前と共に生活をしたいと言い出しおった。何を考えておるんじゃあいつらは…!!」






一には1つ上の新という兄が一人いた。

長男の新は両親と生活をしていたが、

一は小さい頃からやんちゃで、手に負えなくなった両親が、祖父の玄一に世話を頼んでいたのだった。





「お前はどうしたい…一…?」



一の頭を撫でながら尋ねる玄一に、一は目を輝かせて言った。



「…父上と…母上が…俺を必要って…言っとるって事…なんか…?」



「……ああ…そうじゃな…。」






この知らせに一抹の不信感を抱いた玄一だったが、


両親から必要とされたことに喜びを隠せない一に、そんな事は伝えられず、

玄一は萩の城下町にある家に、一を戻す事を決めた。




だがそれが


一の人生を大きく狂わす事になるとは


まだ玄一も知らなかった。









「じゃあな!!じいちゃん!!またちょくちょく遊びに来るけんな!!」







「おう…待っとるけんの!!」









(何も…起こらんといいが……)












―…ザッ…



「…!?なんじゃ…お前ら!!!」





一を見送るとすぐ、数名の武士らしき男が玄一の前に現れた。




「申し訳ございませんが、高砂玄一様。死んで頂きます。」




「なんじゃと!!??お前らは…一体…!!」





―…ガキィン!!!!!!




「!!!!」




「わしを…そうやすやすととれると思うなよ…!!!」


―…ガキィン!!!!





剣術においては師範代をつとめていた玄一は、

近くに置いてあった棒一本で武士達に立ち向かった。













「ハア…ハア………」





数分後…そこには

倒れた武士達と、血に染まった玄一の姿があった。





「ハァ…ハァ…棒きれ…一本で倒されるたぁ……修行が足りねぇな…お前ら……しかし俺も腕が…にぶっちまった…よう…だな………」





―…ドサッ








(わしも…もうこれまでの…ようじゃな…)






―…コツ…



「……こ…れは!!?」




地に伏した玄一が見たものは、武士達の刀についていた朝倉家の家紋だった。





「朝倉…じゃと…??あの長州一の豪家が一体何故………」








(―…?!まさか……一………!!!!!)











玄一は最後の最期まで、一の事を心配しながらその場で果てた。




だが一に、玄一が襲われたという事実が知らされることは無かった……。




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