*サクラ花火*

□一の過去
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萩に着いた一を待っていたのは、両親の非情な一言だった。











「朝倉家に…?俺が…?」





「ああ。朝倉は兄の新を養子に…と言っておる。だが新は病弱だ。一、お前が代わりになってやれるな?」



「兄上の……代わり…?なんで…養子にいかないかんのじゃ…?」





「朝倉は萩一の豪家、そこに養子に行けるのだ。誇りに思え、一よ。」








一の両親は直接的な理由を一に話さなかったが、一も薄々感づいていた。





当時、萩随一の豪家の朝倉家は女しか生まれず、家督に悩んでいた。



そこで白羽の矢が立ったのが、朝倉家と並びに裕福だった高砂家だった。



朝倉家は、我が家を守る為、

そして名家の名を争う高砂家を潰す為、

権力にものを言わせ高砂家の長男を養子に差し出すよう迫った。




長男をとられては家の存続が危ぶまれると踏んだ高砂家は、





新の代わりに一を差し出すことを思いついたのだった。







両親から必要とされた理由が兄の代わりをする為だった事。



次男だから


やんちゃだから


手に負えないから




病弱でもなんでもない兄の代わりに



いつでも両親の側にいて愛された兄の代わりに





一は言わば人身御供として呼ばれただけだった。





それでも一は、両親が自分を必要としてくれていると信じて、兄の代わりを承諾した。





「俺が朝倉に…行ったら母上も…父上も…喜んでくれるんじゃったら…俺は…。」




「ああ、喜ぶに決まっておろう。だが一、新の代わりをするならその言葉遣いをまず直せ、新はそのような田舎の言葉は使わん。」




「……!!!」















「………は…い…。」












一は父にそう言われると、必死に涙を堪えて返事を絞り出した。






大好きなじいちゃんが使っていた言葉ではない




言葉を使って……。






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