*サクラ花火*

□背負うべきもの
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「さっきの花火な…俺のじいちゃんが作り方教えてくれたんだ。」




『おじい…さん…?高砂さんを育ててくれた…。』



そう言うと一は少し微笑んで頷いた。




「じいちゃんな、花火師だったんだよ。いつもみんなが幸せになれる花火作るんだ…って張り切って作ってた。」



『…。』



「でも、花火っていやあ、赤か白かだろ?じいちゃんは、その二つの花火を使って、桜色の花火を作ろうとしてた。」





『桜色の…花火…?』





現代でこそ、夜空を彩る花火は色とりどりでカラフルだが、

江戸時代の花火は赤か白の二色しかなかったのだった。





「夜空に桜が咲いたみてぇで綺麗に違いねぇ…ってな。でもそれがなかなか上手くいかなくて、桜花火は奇跡の花火って言われてた。」




『奇跡の花火…素敵ですね…。』




桜が笑うと、一は桜を見て言った。





「お前と初めて会った時、なんでかその花火の事を思い出してなぁ…。」




『え…?』




「名前もそーだけどよ、なんか、お前に会ったこと事態が…なんつーか…こう………奇跡…みてぇな…。……出会いが衝撃的すぎたからかもしれねぇけどな!!」




『高砂…さん…。』




顔を赤らめて、そっぽを向きながら話す一に、桜も顔を赤くした。






高砂さんと自分は本来出会うことはなかった2人。



この時代のあの瞬間にとばされた事


そして高砂さんと出会えた事


それは奇跡以外のなにものでもなかった。





そして一はそんな奇跡を、なんとなく感じ取っていたのかもしれない。







「憂の事があってから、俺は一人の相手を真剣に好きになる事をしなくなった。」




『高砂さん…。』





「でも何でかなぁ…。桜…お前だけは…誰にもやりたくねぇって思っちまった。

でも…本当の俺を知って、今度はお前を傷つけることになるのかと思うと、

真剣に接する事は…出来なかった…。」




『高砂さん……。』




普段自分の事をあまり喋らない一が、

たどたどしくも自分の想いを伝えてくれた事が桜は本当に嬉しかった。




『私は…高砂さん達に会えて本当に強くなれました。自分の居場所が出来た気がして嬉しくてたまらなかった。

高砂さんの何を知ろうとこの気持ちは変わりません…!!!!

だからどうか…私の居場所…奪わないで下さい…!!

一緒に…いてください…!!!』





「…―っ……!!!!」





桜の言葉を聞いた一は、桜を抱きしめた。




「俺は…お前の事が……



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