*サクラ花火*

□ここにいた証明
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「すみませーん。」





店に入り、声をかけると中から少し風変わりな男性が出てきた。



「いらっしゃい。あ、もしかして小忠太に言われて来てくれた攘夷浪士様達かい?」



「攘夷浪士…というかただの侍ですけど…はい。」



男の問いに、総助は濁すように答えた。




「ははは!!そんなに警戒しないでくれ!!甥の先輩を奉行所につきだすつもりもないし、そもそも私はどちらの味方でもない。」




「……。」




「ただ私はこの時代を動かしていく人達の姿を後世に伝えたいだけでね。」




そう言うと、男性は今まで撮り貯めた写真の数々を見せてくれた。




「!!…これは…」



そこにあったのは、藩主に幕臣。

そして攘夷志士や新撰組などの、数多の写真だった。



「倒幕側から佐幕まで…よくこんなに…」


「コレ、新撰組の局長じゃねーか!?ははは!!」




「ここに写っている方々はみな、この時代を象徴する人ばかりだ。そしてあなたがたも。だからどうぞ、写真におさめさせてください。」





そう言って男は笑うと、なにやら大きなカメラを準備しだした。




「これで撮りますから、そちらに立って頂けますか?あ、ちなみに写真何枚いります?」



「えーと…じゃあ人数分三枚で。」



「はい、了解しました!!では撮りますよ!!」













「おう!!かっこよく撮ってくれよ、おっさん!!」



「ははは!!了解しましたよ。では動かないで下さいね、2分ほど。」





「は?」




驚く三人をよそに、男は当然のように言い放った。



「動いたら像がぶれるからまばたきも極力せず微動だにしないように。ではせーの!!!」




「え?!ちょ…!!!!!」




―…カシャ













「はいやりなおし!!お嬢さん、まばたきしちゃ駄目だよ。」



『す…すみません…』


「桜お前まばたきぐらい我慢しろよ〜!!」


「まあまあ…ではもう一回いきますよ〜」




―…カシャ











「…。」
















「あ〜髪結んでるお兄さん!!今ちょっと動いちゃったね〜。」



「す…すみません…」



「こんのバカ総助〜!!!こんど動いたらのかすぞ!!」


「……ごめんってば!!」





「ではもう一回いきましょうか!!じゃあ今度は頑張って下さいね!!じゃあハイ!!」




―…カシャ











「……。」












「…………。」
















「はい、あとちょっとだよ〜頑張ってね〜。」















「…くっ…あはははは!!!!………は……」












「…い〜ち〜〜〜!!!!!!」

『…高〜砂〜さ〜ん!!!!!』




「わ…悪ぃ…だってなんか…可笑しくなってきて…」




「じゃあもう一回いきましょうかね〜!!!ではせーのっ!!!!!」





………………………………








「ぜぇ…ぜぇ…」





「はい、お疲れ様〜!!」




あの後結局さんざんやり直し、OKが出たのは20分以上経ってからだった。



「しゃ…写真って…みんなこんな苦労して撮ってたんだね…」


『わ…私も知りませんでした…。』


「お…俺はもう二度と写真なんざ撮らねぇぞ…。」






「はい、では今一枚撮れただけなんでもう三回ですね〜!!おじさんも一枚欲しいから。」






「え?」











「おっさんの一枚は諦めてくれぇぇぇ!!!!!!!!!!!」







この後三人は二、三時間


カメラの前で筋肉痛になるほど奮闘したのだった……。








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