*サクラ花火*
□大政奉還
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『はっ…春就さん…?!何でここに…』
「春就…!!!」
驚く二人をよそに春就は荷物を下ろしながら言った。
「問題児はどこですか?」
『…え?あ、高砂さんですか?こっちです!!』
言われるまま桜は春就を部屋に通すと、 すぐに春就は一の診察を始めた。
「は…春就…?なんで…」
「可愛い弟の遺言なので。まったく…長崎出るの大変だったんですから…。」
「…総助…が…?」
春就はざっと診察を終えると、少しため息をつきながら言った。
「喀血に咳、体重減少にこの熱…これ以上無理したら一日ずつ寿命縮まると思ってて下さいね。」
「……。」
「正直、問題児が生きようと死のうと知ったこっちゃないんですが。可愛い弟がわざわざ私に手紙をよこして頼んだ最後の願いなので、私は全力でお前を治療します。」
春就はそう言い放つとニコッと笑い、一の部屋から出て行った。
「…春就…。」
『…。』
........................
―…ドサッ バサッ
「お前が人の頼みで動くとは珍しい事もあるものだな。」
総助の部屋の医学書をあさりペラペラとめくる春就に、楢崎が話しかけた。
「説教なら聞きませんよ、薫。」
「まったく相変わらずだな…。超自分至上主義なお前も弟の頼みは無視できなかったか。」
本をめくる手を止め、春就は答えた。
「…総助には迷惑ばかりかけていましたからね。それにあいつが死ぬ直前に書いた手紙を無視するほど腐っちゃいませんよ。」
「ほう…俺がボコボコにされてたのをあっさり見捨てたのは腐っちゃいない人間っていうのか。」
「ネチネチと鬱陶しいですねえ薫…。何十年前の話をしてるんですか…。」
幼い頃から幼馴染の二人だが、全く気は合わず、いつもこの調子だった。
だが口には出さないだけでお互いの凄さは理解していたし、認めていた。
「なるほど…さすが総助ですね。労咳薬の試作まで作っていたとは…構成も悪くない…。」
「春就…一は…あとどのくらい持つんだ…?」
「次の桜が見れれば上出来でしょう。でも、ま、神のみぞ知る、って所です。私も全力を尽くしてはみますがね。」
そう言うと、春就は医学書の束を抱えた。
「春就……すまないな。」
「素直で気持ち悪いですね。薫らしくないですよ。」
「……はっ倒すぞ春就。」
楢崎がそう言うと春就はニッと笑い、部屋を後にした。
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