*サクラ花火*

□生きる約束
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おぼつかない足取りで自分の家に戻った桜を待っていたのは、

自分が二十年以上繰り返した何も変わらない、普通の日常だった。




『…。』




一の所遇を知る術もなく、毎日は淡々と過ぎていき

次第に桜は全て夢だったのかもしれないとまで思うようになっていた。







桜に残されたのは"記憶"と"約束"だけ。




生きることさえも止めてしまったら一との約束、一の存在さえも無かった事になるような気がして、

桜は辛い思いを押し殺して必死に生きていた。





そして、そんな日が続いた、ある日の事だった…。






........................





ー…バサッ




「あら桜、今日は仕事休みなの?」



『うん、だって今日祝日だよ。』

「あ、そっか、建国記念の日だったわね。」





母はそう言うと、お菓子に手を伸ばしながら新聞を広げた。





「でも本当にすごいわよねぇ…今の日本の基礎を作ったのが桜とほとんど同じ歳の総理なんだからねぇ…。」




『へぇ…そうなんだね…。』

「そうなんだねってもう…」




そうけだるそうに返事をする桜に、母は笑って言った。






「ほら、あんたも谷総理みたいになれるよう頑張んなさいっ。」

















『………え…?お母さん…今…なんて…?』





「え?いや、谷総理みたいになんなさいって。も〜あんたは初代内閣総理大臣の名前も覚えてないの?ほら、ここに特集載ってるじゃない!!」





母はそう言うと、桜に見ていた新聞を手渡した。













『こ…れ……!!!!!!』









新聞に目を通した桜の目には、一瞬にして涙が溢れていた。

そして桜は新聞を握りしめたまま、一目散に家から飛び出した。







「ちょっ…桜…?!!」









桜が握りしめた新聞には、紛れもなくこう記されていた。


















初代内閣総理大臣














"谷 総一"…と。










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