サクラ花火短編集(大)
□【其ノ一】親瑛の仕事
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―…ポクポクポク……
「…それでよぉ…あいつがさ…」
「…まじでか?!やべぇ!!」
「ちょっ…静かにしなさい…!!」
「うるせぇババア!!殺されてぇのか!!!」
『……。』
葬儀の最中、親戚と思われる若者が声を荒げた。
話したり笑い声をあげたりとやりたい放題の若者達に大人達は為す術がないようで、皆見て見ぬふりをしていた。
(おじいさんが亡くなったことなんて…気にも留めてないんだろうな…。)
桜は胸が締め付けられるような気持ちでうつむいた。
それと同時に親瑛の木魚を叩く手もピタリと止まり、あたりはシンと静まり返った。
「…うるせぇ……。」
『え…?』
親瑛がポツリと言葉を発したかと思うと、桜の目の前から親瑛の姿は消えていた。
―……バキャッッッ!!!!!!!!!
大きな音と共に砕け散る木魚の破片が宙を舞った。
その瞬間、さっきまで騒がしくしていた若者の一人はその場に倒れ、他の若者は一言も発さず硬直していた。
「うるせぇって言ってるのが聞こえなかったみてぇだなぁ…?」
「ひぃぃ!!!」
「次はてめぇらの葬式開いてやろうかコラァァ!!!!!」
『しっ…親瑛さん落ち着いて!!!』
完全にキレている親瑛を桜が止められるはずもなくあわてふためいていると、タイミングよく仕事を終えた侑が葬儀に現れた。
「しっ…親瑛!?え?!!何事!??」
『ゆ…侑さん!!親瑛さん止めて下さいっっ!!!』
「え?!あ、はい!!」
状況の飲み込めない侑は、言われるがまま親瑛を力づくで抑えた。
「ちょ!!親瑛!!何暴れてんの!!!」
「人が死んだって言うのにヘラヘラしてるその性根、俺が叩き直してやる!!!…ジジイが死ぬ思いで生き抜いてきたお陰でテメェらがこの世にいるんだ!!その事よーく覚えとけボケ!!」
「親瑛…。」
『親瑛さん…。』
「分かったら黙って座ってろ。」
そう言うと親瑛は祭壇の前に戻り、葬儀を再開した。
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