サクラ花火短編集(大)

□【其ノ二】ご褒美
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『これでよしっ…と…。』




一通りの買い物を済ませた桜は、綺麗な着物や帯が並ぶ店の前に思わず立ち止まった。








『わあ…かわいい…。』




「おやいらっしゃい!!それは新しく仕入れた帯だよ、今人気の吉弥結びで結ぶといいよ!!」






『吉弥結び…?』




飾ってある帯は桜の見たことのない形の帯結びがしてあり、とても可愛らしかった。






『でも…こんなかわいい帯、私には…!!』





着物屋の主人に軽く会釈しながら店から離れようとすると、後ろから突然声が聞こえた。









「欲しいのか?その帯。」









「たっ…高砂さん!!いえ、ただ見てただけで…!!」






桜はそう言うと、慌てて着物屋から離れた。



「買えばいいじゃねーか、買ってやるよ。」



『いいんですっ!!皆さんが大変な時に私だけそんないい思いをするわけにはいきませんっ!!!』




そう言うと、桜は一を店から連れ出した。







「んな事桜が気にしなくていいんだよ、買ってやるよ。」



『本当にただ見てただけなので…それに…私、普通の帯の結び方しか知らないので…いいんです!!』






そう言って桜は少しうつむきながら笑った。





現代から来た桜が着物をスムーズに着れるようになったのはごく最近で、

それを応用できる程の知識など無く、まして教えてくれるような女友達も今の桜にはいなかった。






『だから気にしないで下さいっ!!それよりほら、日が暮れちゃいますよ?帰りましょ!!』







「桜…。」






そして、いまいち納得のいっていない様子の一を引きずるように、桜は家路についたのだった。



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