サクラ花火短編集(大)

□【其ノ三】駆け込み寺の用心棒
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「なんだ貴様…桜から離れろ。」








桜の前に立つその女に、すかさず一も刀を突きつけた。






「貴様みたいな男…世の為にならん…死ね!!」



「よく言われるが初対面の奴にゃ言われたかねぇな…上等だ!!!」



「一!!やめっ…」


















―…ガ…キィン!!!!!!!!!


















―…ポタ…ポタ…











「…何で邪魔すんだこのクソマリモ。」









「…治療しに来た所で怪我人増やさないでよ…一…。あの…今日…呼ばれてました医者の斎藤と申します…。」










「え…?」




一の刀と女の刀を間に入って止めた総助はそう言うと、戸惑う女にニコッと笑った。







........................





―…カチャ…カチャ…






「これでよし…。あと一日これで様子を見ましょう。」


「本当にありがとうございました。こんな山奥まで来て頂けるのは斎藤先生くらいですよ。」



「いえいえ、またいつでも言って下さいね。」







患者の処置を終えた総助が器具を片付けていると、先程の女が姿を表した。








「さっきは悪かったな…。」





「ああ、気にしないで下さい!!俺が勝手に止めに入っただけですから。」







総助がそう言って笑うと、女は少し頭を下げその場を去った。










「すみませんねぇ…彼岸(ヒガン)も悪気があってやった訳じゃないんです。」




『彼岸…?』






住職は三人にお茶を出しながら申し訳なさそうに言った。




「駆け込み寺に来る女は皆男性から必死の思いで逃げてきた者ばかりです。そして寺に後一歩及ばず連れ帰られる女性も多い。」





『……。』





「そんな女性を見ながら育った彼岸は、いつのまにか寺に来る女性の手助けをするようになってましてね…桜さんを見て追われてると勘違いして飛び出したんでしょう…。」






『そう…だったんですか…。』







「年頃の女の子なのに、こんな寺に捨てられた境遇から極度の男性不信でね…寂しいものですよ。」




「……。」







住職はそう言って少し寂しそうに笑うと、三人に深く頭を下げその場を去った。


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