サクラ花火短編集(大)
□【其ノ三】前世の記憶
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「ったく…まさかお前まで思い出してるとはな。」
寺の墓地にいた侑に親瑛がため息混じりに言った。
「そっちこそ桜さんの気を引きたくて言ってる訳じゃないでしょうね。」
「ああ〜?こっちは二階から頭に辞書落とされた事まで思い出したぞコラ。」
侑にガンをとばしながら親瑛は言った。
「でもなんでこんな突然二人同時に思い出すんだよ。原因は何だヤブ医者。」
「…こんな非現実的な事医者に聞かないでよ…でもまあ…何かのきっかけで前世の事を思い出すって事例も稀にあるみたいだよ。」
「きっかけ…桜…か…。」
「だろうね。よっぽど取られたくなかったんだろ…高砂さんも…総助も…。」
「我ながらもうほぼ怨念だな。」
親瑛はそう言って笑うと墓に手を合わせた。
「まあ…理由はもういいとして…こうやって仲間の墓を見るのは気分のいいもんじゃねぇな。」
「そうだね…。山名さん…信多…周一郎…あの時の戦で守れなかったんだね…俺……。」
仲間の墓標を前に目を伏せる侑に親瑛が言った。
「あれは…俺のせいだ。今更言うのもなんだが…悪かったな…"総助。"」
「親瑛……。いや…一って言った方がいいのかな。」
「なんかまぎらわしいな。」
「ホントだよ。」
二人はそう言うとケラケラと笑い合った。
「あいつらは…今の日本を見て笑ってくれるかな…?」
「……こんなにみんな笑ってる日本になってんだ…笑うだろーよ。」
「…だといいね…。」
侑はそう言って笑うと、そっと墓標に手を合わせた。
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