サクラ花火短編集(大)
□【其ノ六】金と悪運 前編
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「…で、お前は何しに来たんだよ神太。」
食事を済ませ満足そうな神太に一が詰め寄った。
「人探しだよ、人探し。」
「人探しぃ?金儲けの間違いだろ。」
一の言葉に神太はニッ笑って言った。
「相変わらず察しがよくて助かるな。で、まあその探してる女が中々捕まらなくてな、お前らに手伝ってもらおうと思って。」
「はあああ?何で俺が手伝わなきゃならねぇんだよ!!知るか!!」
「てめーにあんな大金貸したの誰だと思ってんだ〜?」
「うっ…でもあれは返しただろーがっ!!」
神太の言葉に一瞬ひるんだ一に、神太はたたみかけるように続けた。
「返したからってなぁ…あんっっな大金工面しすんの本当に大変だったんだぞ!!だいたい今だって誰の為に金作ってると思ってんだ?てめーがアホみたいに軍艦買ってきたからだぞ、成和公は大笑いだったがな、俺は笑えねーんだよぉぉ!!!!!」
「……。」
そっぽを向いて耳を塞ぐ一に、苦労話をありありと話続ける神太を総助がなだめた。
「じ…神太…まあまあ…落ち着いて…。」
「総助、お前も同罪だからな。監督不行届だ。」
「はあああ?!俺は一の保護者じゃないっ!!!!!」
『……。』
ギャーギャー大の男三人が言い争うのを見ながら桜は苦笑いを続けていた。
「だー…もう分かったよ!!!手伝ゃいいんだろ!!!」
「ハァ…ハァ…わ…分かりゃいいんだよ分かりゃ…。」
「つ…疲れた…こんな騒ぐだけで疲れるなんて俺達も歳だね…。」
そう言ってぐったりする三人は顔を合わせ笑いあった。
「そりゃそーだろ、あんっっな遊び狂ってた一が、芸子身請けしてんだからなぁ。」
『へ?』
神太はそう言うとにやにやしながら桜の方をじっと見た。
「にしても芸子にしては色気がねぇな…」
『!!!!』(ガーンッ!!!!!)
―…ゴスッ!!!メキメキメキ…
「人の女に向かって言ってくれるじゃねぇか…殺したろか神太〜…。」
「桜さんは芸子じゃないし、一に身請けもされてないし、ちなみに一の女でもないからね〜…。」
「痛い痛い痛い痛い!!分かった!!やめろ!!バカコンビ!!」
一と総助の攻撃から逃れた神太は桜の隣に駆け寄った。
「あんな二人にあそこまで好かれてお前も大変だな。」
『!!』
「…とゆーかこの娘が芸子じゃねーならあの大金はどこに消えたんだよ!?まさかお前、他に妾を囲ってやがるな?!」
「囲ってねぇ!!の…飲みつくしたんだよ!!!」
「300両分も飲みつくす馬鹿がどこにいんだよ!!バカ!!」
(…300両…?)
その金額に思い当たる節があった桜は、隣にいた総助を見上げた。
「楓さんの身請け金…神太から借りてたんだね、一。」
『はい…。』
そう言って総助に返事をすると、桜は少し寂しそうに笑った。
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