サクラ花火短編集(大)
□【其ノ十】守るための戦
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「えらく楽しそうではないか庶民諸君。」
「!!」
突如背後からの声に反応した一は、三味線とは逆の手に持っていた刀を現れた男の喉元に突き立てた。
「やはり隊長レベルの"武士"だけしか突然の奇襲には対応できぬようだな。」
「佐竹…何しに来やがった。」
鬼の形相で一は佐竹と呼ばれる男を睨むと、刀を鞘に納めた。
「何しに来たも何も、我々の隊もこの地区の砲台を任されているのでな。」
「じゃあ大人しく自分の砲台のとこに帰れ。」
佐竹は完全に武士からなる"神峰隊"と呼ばれる隊を率いる男で、たびたび庶民の隊である一の隊を見下していた。
「百姓兵が調子に乗ってヘマをしないか見張りに来てやったのだ、ありがたく思え。」
「何だと貴様ぁぁ!!」
「止めとけ、挑発に乗んな!!」
今にも佐竹に飛び掛からんとする隊の兵を制止すると、一は佐竹を睨みながら続けた。
「俺達にケンカ売ってる暇があるなら幕府軍と戦って下さいよ、早く戦争終わらせちまえば俺らの顔も見なくて済むんですから。」
「…ふん。」
佐竹はそう言うと、一を押し退け自隊の警護場所へと戻っていった。
「高砂さん!!何で言い返さないんですか!!あいつら俺達の活躍妬んでるだけですよ!!」
「……。」
「高砂さん…?」
―…がしっ!!
「俺はな〜…こんなとこで自重できるタイプじゃねえんだよ…!!本当なら今すぐボコボコにしてやりてえが大将として我慢してんだ。これ以上俺を怒・ら・せ・ん・なっっ!!!!!!」
仲間の胸ぐらを掴み鬼の形相で今にも殴り掛かりそうな一に、その場にいた兵は皆次々と大人しくなった。
「ああああムカつく!!ムカつくがこんな所で味方の兵減らすわけにはいかねえんだよ!!あああああもう!!誰か一発殴らせろ!!」
「嫌ですっ!!!」
自分達以上に怒る一のおかげで冷静さを取り戻した兵達は
いまだ怒りの収まらない一を夜通しなだめ続けたのだった…。
......................
―…ザッ…ザッ…
「あ〜まだ腹の虫が収まらねぇ〜…。」
「も〜何時間経ったと思ってるんですか〜!!」
一達の一団は山を越え、次の戦場へと足を進めていた。
「だいたいてめぇらはムカつかねぇのか!!」
「いや…ムカつきますけどその分まで高砂さんが怒ってくれてるので割と冷静です。」
「なんか才原さんの気持ちが分かった気がします!!」
「…おい、今言った奴誰だ。打ち首にしてやる、出てこい。」
「あははは!!」
―…ドンッ!!ドンッ!!
「!!」
「伏せろ!!」
和やかな雰囲気を一変させる銃声に、突如辺りには緊張が走った。
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