サクラ花火短編集(大)

□【其ノ十一】千鈴妓唄
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―…シャン…シャン…






「千鈴姉様、お客様がいらしています。」



「野菊…ありがとう。今行きます。」





「千鈴姉様…?前挿しはお付けにならなくてよろしいのですか?」



「…ええ…簪はもう…付けているから。」











「…?」










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時は明治ー江戸ー



移ろう月日に消えゆくものと新しいものが交錯する時代。


長州薩摩土佐を中心とした新政府が、政府としての機能をようやく果たし始めていた頃だった。






―…コンコン




「入るぞ…」

―…パパパパパパパパン!!

「!!!!???」



「あ、神太さん。大丈夫ですか?」











「小〜忠〜太〜…!!!!!!」










「てめえ嫌なことがある度大臣室で爆竹鳴らすなって何回言えば分かるんだ!!!!!!」




火が着いたように怒る神太に、小忠太は笑いながら答えた。




「だから花火だって言ってるじゃないッスか〜!!一さんに怒られますよ?あと小忠太じゃなくて今は総一ですっ!!」



「お前のも一のも爆竹だ爆竹!!いーから換気しろ!!いつかここ火事になるからな〜…ったく…。」





「へへ…。」


「なんだよ。」




煙たそうに部屋に充満した花火の煙を換気する神太に小忠太は嬉しそうに言った。






「なんか久々に一さんの話とか出来る人と話せて嬉しくて。」



「そっか…楢崎さんも引退しちまったからなぁ…。」






ニコニコと嬉しそうな小忠太に、神太も頬を緩めた。







「で…爺さま達に何言われて爆竹鳴らしてたんだ?」



「…一国の大臣に妻がいないのはおかしいから早く妻を取れやら見合いしろやらうるさいんッスよ〜!!あの爺さま達!!もう放っといて欲しいッス…。」










かなり参った顔で机に突っ伏す小忠太に、笑いをこらえながら神太が続けた。






「爺さま達の孫娘やら親戚やらの見合い写真を見せられまくってたってとこか?」



「…これがまた爺さま達にそっくりな娘さんばっかりなんッスよ…無いでしょ…?」






小忠太の言葉に神太は堪えきれずにゲラゲラと腹を抱えて笑った。






「もー…他人事だと思って…見てるだけで胸焼けしそうだったんッスからー…床でまで爺さま達の顔とか見たくないッスよ…。」




「いや…悪い悪い…。それはご愁傷さまだな…。じゃあ今日は口直しにいい所連れてってやるよ!!」






「…いい所…?」






不思議そうに首をかしげる小忠太に神太がこっそり耳打ちすると、


小忠太はニッと笑い、いそいそと仕事を片付け始めた。




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