サクラ花火短編集(大)
□【其ノ五】僧職系男子の憂鬱
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―数日後、友引当日。
「……。」
『……。』
「親瑛…ここの墓地幽霊でてるぞ。」
「…急ぎの相談ってそんなことかぁババアぁぁ!!!!!!!!!!!」
せっかくのデート当日だったが、朝から親瑛の寺には相談があると近所のお婆さんが訪ねて来ていた。
「勘弁してくれよ婆ちゃん…そりゃあ墓だし幽霊くらいいるだろうよ…そんな事くらいで出掛けらんなくなったじゃねーかよクソババア…」
「でもここ最近酷いんだよ、火の玉は沢山見るし、変な音や叫び声聞いたって人もいんだよ…。」
『…ひ…火の玉…?!』
お婆さんの話に、桜は怯えながら息を飲んだ。
「早いとこ供養してやっておくれよ、このままじゃ近所の私らも気が気じゃないんで頼んだよ。」
「ちょ…婆ちゃん!!」
お婆さんはそれだけ言うと桜と親瑛に頭を下げ、そそくさと寺を後にした。
「ったく…俺は祓い屋じゃねーっての…。」
『ど…どうするんですか…?親瑛さん…。』
「怖ぇのか?」
『……はい。』
不安そうに親瑛を見つめる桜の頭を、親瑛はポンと撫でた。
「そんなに不安そうな顔すんな、なんとかしてやっからよ。」
『親瑛さん…!!』
.......................
―…ホー…ホー…
『……。』
「墓っつっても広いからなぁ…この辺で見張るか。」
『親瑛さん…?そのバットは一体…。』
墓地の周りの茂みに身を隠した親瑛の手には見慣れた金属バットが握られていた。
「幽霊なんかいねーんだよ、いるなら変質者か泥棒だ。」
『そう言えば初めて会った時も泥棒を撃退しようとしてバット持ってましたよね…。』(←不安げ)
「……そうだったっけか?」(←しらばっくれ)
笑い合う二人をよそに、辺りは次第に静まり日も暮れてきていた。
『暗くなってきましたけど…別に何も起きませんねぇ…。』
「そーだろ、幽霊なんていねーんだよ………それより…。」
―…チラッ
『え…?』
「今日出掛けらんなかったからなー…。」
『ちょ…高砂さ…あ、いや…!!』
「……。」
思わず親瑛の名前を間違え焦る桜を押し倒すと、親瑛は舌を入れ激しくキスをした。
「…名前間違ってんじゃねーよ。」
『ハァ…ハァ…す…すみませ…。』
「…許さん。」
親瑛はそう言うと、慌てふためく桜の服の中に手を入れ胸に触れた。
「親瑛さ…やっ…!!」
親瑛が桜の胸に置いた手を動かした……
瞬間だった。
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