サクラ花火短編集(大)
□【其ノ十二】天上の花
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―…カタン
「おう…悪いな。」
彼岸に出されたお茶を一口すすると、神太は息をついた。
「お前は…なんだ…新政府の役人になったのか…?」
「はは…まあな、本当はこんなとこで油売ってる場合じゃねーくらい忙しいんだがな。」
「そ…そうなのか…。」
「……?」
彼岸は一言そう言うと、何か迷うように俯き黙りこんだ。
「どうしたんだよ?」
不思議そうにする神太に、彼岸は突如深く頭を下げた。
「無理を承知で…お前に頼みがある…!!」
「は…?」
「私に何か…仕事を与えては貰えないだろうか…!!!」
突然の彼岸の言葉に神太はキョトンとした顔で彼岸の話を聞いた。
「正直この寺の金は底を尽きてる…でもここにいる女達は外に出ることは出来ない…だから…私がなんとかしなければいけないんだ…。」
「……。」
「知識も教養もロクにない私が働ける所なんてほとんど無くて、女郎屋に…行ったんだが………」
「…お前。」
「相手の男と女郎屋を壊滅させて一日でクビになって、あの界隈出入り禁止になった。」
彼岸の言葉に思わずふきだしそうになった神太は必死に手で口を押さえた。
「女郎屋に来た男はみんなここに来る男と同じ目をしてた…!!どいつもこいつも…やっぱり男なんて女を道具としてしか見てないんだ…!!」
「………。」
「あ…いや…すまん…。」
思わず口から出た言葉に彼岸は目の前の"男"の神太から目をそらした。
「……分かった、ちょうどお前にぴったりな仕事があるから紹介してやるよ。」
「ほ…本当か…?!」
喜び顔をあげる彼岸に神太はニッと笑った。
「但し、今度は投げ出すんじゃねーぞ。」
「ああ…恩に着る…!!!!」
神太はそう言って頷くと、寺の者に挨拶をすませ彼岸を連れて寺を後にしたのだった。
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