サクラ花火短編集(大)

□【其ノ七】嵐の前ぶれ
2ページ/5ページ


......................




ー…ブロロロロ







「侑さん車出してもらってすみません…侑さんの車が一番荷物乗りそうだったんで…。」



「いいよ。じいちゃん達に出させるわけにいかないし、親瑛の車はガラ悪いもんね。」


「なんだとコラ。」



『まあまあ…わあ!ホント桜満開ですよ!!綺麗〜…。』











桜が指差した先には辺り一面満開に広がる桜が立ち並んでいた。




「この辺りはかなり有名な花見スポットッスからね〜!!」


「ま、ド田舎だから来てんのは地元のやつばっかだがなー。」






「親瑛!!侑!!こっちじゃこっち!!」




車から降りると近所のおじいさん達がお酒を囲んでおり、すでに出来上がった状態で手をふった。






「やっと来たか!!もう酒からっぽじゃぞ。」


「そんなこったろーと思って買ってきてやったわ。」


「お、気が利くじゃねーか!!桜ちゃんも早く座りんさい!!」



『は…はいっ!!』





「じじい共、桜にセクハラしたら墓に埋め込むからな。」


「そうですよー、そんな事したらもう二度と診ませんからねー。」



「おお怖い怖い、愛されとるの〜桜ちゃん。」



『あはは…。』










「じゃあ改めて乾杯するッスよ〜!!」




「「かんぱーい!!」」








陽も沈み始めた夕暮れ、楽しそうな声が桜並木に響き渡り、辺りは一層にぎやかさが増した。

近所の皆で花見をする習慣などなかった桜も、あっという間に皆と打ち解けてしまっていた。








「こんな可愛いお嬢ちゃんが寺を手伝いに来とるなんて、玄瑛が生きてたらさぞや喜んどったろうなあ。」


「親瑛と玄瑛が桜ちゃん取り合って大変なことになっとったに違いねえな。」



『玄瑛さん…親瑛さんのおじいさんですよね?親瑛さんによく似てるって聞きました。』





ー朝倉玄瑛ー







親瑛さんの祖父で育ての親。親瑛さんはおじいさんにそっくりだとお寺に来る人皆が口々にそう言っていた。





「似とる似とる!!顔はもちろんあの破天荒でやりたい放題な所も、女好きで嫉妬深い所もよー似とる。」



『はは…そうなんですね…。』



「生きてた時は親瑛と喧嘩ばっかりでな。ほら、頑固者同士だから。」



「そういや花見にも親瑛引きずって来て説教したりしてたよなぁ!!よく大騒ぎして…。」



「ああ…それからあっという間にポックリ逝っちまったがのう。」




「ああ…。」



『……。』




皆はそう言うと、少し寂しそうに笑った。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ