サクラ花火短編集(大)
□【其ノ八】大切な日々
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ー…ザッ…ザッ…
「ふぅ…。」
ある晴れた日の午後、寺の墓地に侑が一人現れた。
「この墓に参る時の違和感は変わらないなぁ…。」
そう言うと、侑は総助の墓に手を合わせた。
今日は総助の命日。
あの日戦が起こり、総助や仲間が命を落とした日から150年後だった。
「…あれ…この花…。」
―…バキッ
「?」
『ゆ…侑さん〜…。』
「桜さん!?」
突然背後から聞こえた桜の声に、侑は驚き振り返った。
「な…何やってるんですか!?」
『お…降りれなくなっちゃいました。』
木の枝にしがみつく桜に、侑が近寄った。
「何で木になんて登っちゃったんですか…?」
『子供達にひっかかったボール取ってあげるって約束してて…木登り得意だったんでいけると思ったんですが…。』
「そんなの俺か親瑛に言ってくれれば取るのに…じゃあ、はい。」
そう言うと、侑は桜に手を伸ばした。
『え…?』
「受け止めてあげるから、飛び降りておいで。」
『で…でも…。』
「大丈夫、絶対落とさないから。」
―…ドキッ
『侑…さん…。』
侑の言葉に桜は顔を赤らめながら、意を決して木の枝から飛び降りた…
瞬間だった。
「そうはさせるかぁぁぁ!!!!!」
「え?」
『へ!?』
―…ドンッ…ゴロゴロゴロゴロ!!!!!!
「わああああああああ!!!!」
『いぃやああああああああ!!!!!!』
桜を受け止めようとした侑を親瑛が飛び蹴りし、
三人はあっと言う間に坂道を転げ落ちていったのだった。
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