サクラ花火短編集(大)

□【其ノ九】消えない鎖
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―…ガラッ





「おはよー、入るよ〜?」


『あ、侑さん!!おはようございます!!』





朝早く、出勤前の侑が親瑛の寺に顔を出した。




「親瑛いる?」


『はい!!すぐ降りて来られるかと…。今日は一日法事が立て込んでるみたいで準備に追われてるみたいです。』



「…そうだよね。」


『?』



侑が座った座敷のテーブルにお茶を出すと、桜はテレビをつけた。






「…ニュースをお伝えします。昨夜、市内で二件の火事が発生し、焼け跡から二人の遺体が見つかりました。消防は…」






『最近なんだか火事が多いですよね…。』



ニュースを見ながら桜が心配そうに呟いた。

ここのところ桜達が住んでいる近くで火事が多発し、よくニュースにも取り上げられていたからだ。




「………。」


『…侑さん?』











―…バタバタバタッ




「あーあちー!!!!桜、数珠とってくれー!!」



バタバタと慌てて準備をしながら降りてきた親瑛は、座敷に座る侑に目をやった。



「ん?何してんだお前、仕事行けよ。」


「………。」



「……侑?」



親瑛の問いかけに応じる事なくじっとテレビを見つめ動かない侑を見て、親瑛はテレビの電源を切った。




―…ブツッ



「くだらねぇもん見てんじゃねーよ。」






『く…くだらないって親瑛さん、ニュースですよ?はい、数珠…。』




桜は不思議そうにそう言うと、数珠を親瑛に手渡した。



「…あ…親瑛……ごめん…あのさ、今日の…」

「来なくていい。」




「……。」



侑の言葉を遮るように言った親瑛の言葉に、侑は俯き笑った。



「……そういう訳にはいかないでしょ。」



「てめぇが来ると法事が辛気くさくなんだよ。もう7回忌だ、時間が止まってんのはお前だけだぞ、侑。」



「……。」



黙りこむ侑を横目に親瑛は荷物を抱えた。



「…とにかくお前は仕事に行け、お前ん家には明日行くから。いいな?行くぞ桜!!」



『は…はいっ…!!では侑さん…また…。』





桜は侑に軽く頭を下げると親瑛と共に車に乗り込んだ。





ー…ブロロロロロロ





「…。」




残された侑は何か言いたげな顔で親瑛の車を見送りながら、

その場に立ち尽くしていた。


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