サクラ花火短編集(大)

□【其ノ十】二度目のさよなら
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ー…コンコン




「侑さん…!!」


「俊輔…。」




侑の病室に現れた俊輔は、明らかに動揺した様子で侑にかけよった。




「侑さん…今の話…。」




今にも泣き出しそうな俊輔に、侑は困ったように笑った。




「聞かれちゃったか…。あの二人には…絶対に言わないでね?」


「え…?でも…!!!!」









ー…バンッ!!!!!




「侑!!」

『侑さん!!!!!』




病室に息を切らして入ってきた親瑛と桜は、目を覚ました侑に駆け寄り抱きついた。




『良かった…!!良かった…!!!!』


「心配かけさせんじゃねえ!!このバカ!!!!!」




「い…痛いよ二人とも…。」






涙を流して喜ぶ桜と親瑛の様子に、侑は少し驚きながら笑った。




「心配かけてごめん…でもたいした事ないし、もう大丈夫だから。」



「…。」




「…本当か?」




何か言いたげな顔で黙り込む俊輔の隣で、親瑛は府に落ちない様子で尋ねた。






「医者の言うことが信じられない?」



「…そう…だったな。」







ー…コンコン




「才原さん、診察させて頂いてもいいですか?」


「あ、はい。じゃあみんな…来てくれてありがとう。」



『はい…!!また明日…来ますね!!』





桜はそう言ってニコッと笑顔で返すと、親瑛と俊輔と共に病室を後にした。





「桜、侑の着替えとか…先に行って準備してやってくれるか?」


『あ、そうですよね!!じゃあ取りに行ってきますね!!』






ー…バタバタバタ…









「…さて……何聞いた、俊輔。」



「ー…!!」








突然の親瑛の言葉に、俊輔は真っ青な顔で俯いた。





「何にも聞いてない…ッスよ…?」


「冥土に送られてぇか。」






「…坊さんのセリフじゃないッスよ…親瑛さん…。」




そう言った俊輔の目からは、堪えていた涙がポロポロと溢れ出した。











「侑さんの足…もう…無理みたいッス…。」









「……そうか。」









親瑛はそう言って俯くと、涙をぬぐう俊輔の頭をポンポンと叩いた。



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