□はじめよう、新たな僕らの関係を
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*数年後の二人。


あの事件から早数年が経とうとしていた。
考えてみればあっという間だったなと、しみじみ思う今日この頃。
俺は今日、大老師の座につく。
本当はもっと早く就く予定だったんだけれど
色々とやることがあり先延ばしにしていたのだ。

ベランダの手すりに寄りかかり、空を見上げると
空は雲一つない晴天で、気持ちが良かった。


「それにしても、無事就けるなんて…本当、ねえちゃんには感謝だなー。」


そっと自分の後頭部をさする。
そこには傷も穴も何も無い、頭部。
これが一度ブチ壊れた事は、村の祓い手は誰も知らない。
知っているのは、俺とねえちゃんとアーウィンの3人だけ。

入触され自ら自害した俺は、央魔の…ねえちゃんの血の奇跡で再びこの世に呼び戻された。
もしあの時血の奇跡が起こらなければ、今俺はここには居ない。
死んで、今頃は土の中だっただろう。
いやもしかしたら、骨は野良犬がどこかに持って行って…って変な事を考えるのはやめよう。気持ち悪いし。


「フレディ。」


馴染みの声で名前を呼ばれ
空を見るために上に上げていた顔を戻すと
窓よりひょっこりと顔を出したねえちゃんがニコニコしてこっちを見ていた。
その姿に俺の頬は緩む。


「よぅ、ねえちゃん。」
「いい天気ねフレディ。そっちに行ってもいい?」
「どうぞー。」


ちょいちょいと手招きをしてこっちに呼べば
ねえちゃんは嬉しそうに俺の隣に並んだ。


「うーん…気持ちいいー。」
「あんまり日の光当たんないようにね。」
「わかってますー。もうっ!フレディは私を子ども扱いするんだからっ!」
「だって本当に子どもみたいなんだもん。背ちっちゃいし。」
「フレディが伸びすぎなのよ!」


昔は彼女より小さかった身長は、今では彼女の頭1つ分ほど高くなっている。
まだ未熟な部分もあるが数年の月日は俺を大人にしていった。
それはねえちゃんも同じで、体つきや顔つきが大人っぽくなった…というか綺麗になった。
中身はあまり変化は無いけどね。


「それにしてもここでのんびりしてていいの?」
「なんで?」
「だって今日、大老師って座に就くんでしょ?色々と準備があるんじゃないの?」
「大丈夫大丈夫、準備は昨日の内に終了してるし就任式は夜からだし。それまでは暇人。」
「そうなの?じゃあゆっくりしていられるの?」
「そういうことー。」
「わぁっ!それなら今日はフレディと沢山お話が出来るのね。」


ぱあっと花が咲いたように笑うねえちゃん。
ついでに可愛いことも言っちゃったりするもんだから
俺の頬は一気に熱をもつ。


(クソッ…それは反則だろ。)


赤い顔を見られないよう、さり気なく逸らして俺は「そうだね。」と相槌をうつ。
ちらりと見た、ねえちゃんは今空を見ることに夢中で俺の様子は気づいていない。
そこで改めて俺は、今ねえちゃんと二人っきりだということを認識する。


「ねえちゃん、今日教育係は?」
「アーウィン?今どこか出掛けてるみたい。」
「そうなんだ。」
「アーウィンがどうかしたの?」
「いんや別に。」


ねえちゃんにどこか執着しているアイツは今出かけている。
と、いうことは邪魔者(?)は居ないということで
……今しか言うチャンスはないってこと…か。


この長年秘めていた想いを彼女に告げる時が来たのだ。


ずっと決めていた。
あの事件の後、央魔になったねえちゃんを何があっても護ろうと。
祓い手の仕事だからじゃない、一人の男としてねえちゃんを護るって。

今日、俺は大老師に就く。

それと同時に、この曖昧な関係を卒業しよう。

いつまでも“姉”と“弟”のような関係は嫌なんだ。



心臓が痛い。
喉がカラカラだ。



正直言うのは…ほんのちょっと怖い。
だけど、言わないと始まらない。



「なぁ、ねえちゃん。」
「なぁに?」





「好きだ。」





琥珀色の優しい瞳が、揺らぐ。
長い長い沈黙の後。
やがて、その小さな口から言葉が発せられた………。





「……私も、好き。」





繋がった二人の想いは幸せへと導こう。
どんなことがあっても大丈夫。




二人なら乗り越えていけるから。





◆◇◆◇



つーわけで、ねえちゃんは俺のだから。
帰ってきて突然意味不明なこと言うな。何が『つーわけで』だ?誰が誰のモノだって?
えー、理解能力無いなー。
もう一度その頭をカチ割ってやろうか?
(アーウィンがなんだか怖い…。)





*完全に管理人の妄想1000%。

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