□雨はまだ止まない
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しとしと、と地上に降りそそぐ雨は連日続いている。
町行く人々は皆、様々な色の傘を差して歩いていく。


そんな様子を、私は万事屋から見下ろしていた。


「銀ちゃーん。」
「あぁ、なんだぁ?」
「雨、いつになったら止むネ?」
「結野アナはだいたい明後日ぐらいには止むって言ってたぞー。」
「ぐらいってそんなの曖昧ヨ!もうちょっとハッキリカッチリした答えを私は聞いてるネ!!」
「んなこと俺が知るかよ。結野家でも行って聞いて来いコノヤロー。」
「チッ、使えないアルな。そんなんだからいつまでたってもモテないんだヨ。」
「きゃぐらちゃぁああああん!いきなり言葉のボディブローきめるのやめてくれるっ?!銀さんナイーブだから!!」


わーわーと騒いでいる銀ちゃんを無視して
私は自分の愛用の傘を手に取り、雨が降り続く歌舞伎町へと繰り出した。
銀ちゃんは、買い物から帰ってきた新八がどうにかしてくれるだろう。
それしか奴は脳がないからナ。


ぽつぽつ。
パラパラ。


傘に雨が当たり、音を奏でていく。
それはとてもリズミカルのような、そうじゃないような…何とも言えない感じだ。


私は雨が好きだ。
まぁ一番好きなのは晴天だが。
夜兎族は日の光が苦手でよく晴れた日でも傘を差さないといけない。
なので傘を手放せるのは、雪や曇りか雨の日か…とりあえず晴天の日以外じゃないといけない。


パシャパシャ。


私は自分の差していた傘を閉じ、降りそそぐ雨を全身で受け止めた。
道行く人が皆私を見ていくし、この季節にはまだ冷たい雨だがそんなこと気にならない。


「〜♪」


スキップをして町道を駆け抜けて行く。
そしてたどり着いた先は、いつも遊びに来ている公園だ。
当たり前だが、公園には誰も居ない。
皆、家で大人しくゲームとかしているんだろう。
全くこれだから今の子は、皆もやしっ子なのだ。


「おぅおぅ、こんな雨ザーザーなのに傘も差してない馬鹿がいると思ったら、お前かよチャイナ娘。」
「げっ?!!」


後ろからかけられた声に、弾かれた様に振り向くと
そこには私と同じように傘も差さずに突っ立っている憎きあんちきしょーの姿。
つか馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。
お前も人の事言えるか。


「自分の姿見てモノを言うヨロシ。お前もぐしょぐしょネ。」
「俺には必要無いんでさァ。」
「はぁ?」
「邪魔になんだろ。」


ふっと私から視線をそらし、自分の愛刀にそっと手を置くサド。
あぁそうか…こいつは。


“人を殺して生きてるからさ。”


あの時の言葉が脳をよぎる。
普段のふざけた感じからは想像もつかないが、コイツは真選組一番隊長。
もっとも死線を潜り抜けて、血を浴びてきた。


だから、傘なんかいらないのか。


人を斬る時に邪魔になるから。



「…私、雨好きネ。」
「はっ?」
「雨は何もかも流してくれるから。」



そうだ、雨は流してくれる。
汚れも、涙も、血も…何もかも綺麗に流してくれる。



「…そうか。だったら俺も雨は好きだねェ。」



降りそそぐ雨の中、全身を濡らしたサドは微かに笑う。
その表情は、どこか哀愁に満ちていた何とも言えないモノだったけれど。
私はそれに負けじと、二カリと笑ってやった。



しとしと。


ざぁざぁ。





雨 は ま だ 止 ま な い 。





***



たまには喧嘩しないで、こうしてお前と雨にあたるのも悪くないかもなァ。

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