□結果はまさかの最高です。
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「たのもぉおおぉおおおっ!!」
「っ?!!」



うららかな昼下がり、奴は台風のごとくやってきた。



*



「んで、なんじゃお主。急に門を蹴破って、何かあったのか?」
「何かあったからこうして来てんだヨ。」


ここは結野家の屋敷の一室。
この屋敷の主である結野晴明は、昨日撮った『スパイダーマン3』をさて見ようかと思っていた矢先に
とんでもない爆音と共にやってきた突然の訪問者に目を丸くした。
来客は以前世話になった万事屋の一人である少女であり、今は茶菓子に夢中でかぶりついている。
いやしかし、門番である鬼を見事に蹴散らしここまで来たということは…やはりこの娘只者ではない。


ぱくぱくと凄まじい勢いで食べていた茶菓子はやがて無くなり
少し覚めたお茶を飲みほして、少女はそこでやっと晴明と目があった。


途端、澄んだ青空のような目はせわしなくキョロキョロと動かし始め
やがて小さい体を更に小さく縮みこませて、絞り出すような声で話し始めた。


「…お願いがあってきたんだヨ。」
「お願い?」
「……お前らは占いをやっているんだよナ?」
「あぁ、儂らは占術・呪術・祭祀などを司っているが…それがどうかしたのか?」
「それならっ!それなら人と人の相性ってわかるのカ?!」


バッとまるで飛び掛かって来んばかりに顔を近づけられて、晴明はぎょっとする。
しかし少女はそんな事も気にせずに、必死の表情で晴明の胸倉を掴んで離さない。
がくがくと自分の体を揺さぶる少女を晴明は何とか落ち着かせて、詳しく話を聞くことにした。


少しクラクラする頭で何とか少女の話をまとめてみると。


なんでも少女には憎くて憎くて仕方ない男がいるらしい。
その男は真選組の一番隊隊長で、顔は恐ろしく良いが馬鹿でドSで変態で性格は最悪。
いつも会うたびに喧嘩をふっかけられ、女扱いはされた事などない。
そんな奴と日々喧嘩をしているが、ある日万事屋の眼鏡の少年(名前は忘れたが)に言われたらしい



“神楽ちゃん達って本当に仲が良いんだね。”と。



そんなはずはない。自分たちは仲など良くない。とそう思い、眼鏡の少年を一発殴り気が付けばここまでやって来た
……という訳らしい。


「なるほど、状況は解った。要はその男と主の相性を占えばいいんじゃな?」
「そうアル!私とアイツは決して相容れることない存在ネ!それを証明し、清々しくあのクソドSに勝負を挑むネッ!!!」


声高らかにそう叫ぶ、少女。
そんな少女を静かに自分の前に座らせ、監視という名目で江戸の街に散らばっている無数の式神の内の一体を此方に呼び戻し、その式神から少しの情報を読み取る。
占術に必要な情報は目の前の少女と式神より既にそろっている。


「さて、と。占術をする前に一つ聞いてもよいか?」
「何アルか?」
「仮にもしも自分にとって都合の悪い結果になったとしても、主はそれを受け入れられるか?」
「…それは、サドと私の相性が良い時の場合の話カ?」
「まぁ主にとってそれが都合の悪い結果なら、そういう事じゃ。」
「それは心配いらないネ!なぜならそれはありえないからナッ!!!」
「……そうか、ならば占術を始めよう。」


手を合わせ、言霊を紡いでいくと床に現れるは五芒星。
それに少女の息を飲む声が聞こえるが、今は占術に集中しなければならない。


様々な情報が頭に流れていき、やがてはまとまっていく。


(これは…。)


スッと目を閉じていた目を開けると、そこには期待に満ちた少女の顔。
その表情に引きつる顔を何とか戻して、晴明は重い口を開いていく…。



「主と相手の相性は…。」




「………………。」




「あ、ありえないネェェエエエエエッ!!」





バタバタとものすごいスピードで駆け出して行った少女の後姿を見ながら
1人残された晴明は、フッと笑みをこぼす。





「顔、真っ赤じゃぞ?」





結 果 は ま さ か の 最 高 で す 。





***



ありえないって思っている筈なのに…ちょっと喜んでいる自分が居ることが信じられないっ!!

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