□きっと何度でも僕らは出会う運命
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+転生


夢を見た。


不思議な不思議な夢。
その夢の中で、私は知らない公園に1人突っ立っていて
ある二人の男女の姿を少し離れた所で、じっと見つめている。


女の方は、桃色頭に異様に白い肌と青い目。
驚いたことに私にそっくり…というか私だった。
声も顔も何もかも、同じで。その場所に私は二人居た。
ただ違うのは服装と番傘を持っているだけ。

男の方は、蜂蜜色の髪と赤い瞳に綺麗な整った顔。
黒いカッチリとした服を身に纏い
現代で持ち歩いていたら確実に捕まると思われる、見事な日本刀を腰に差していた。


二人は、小さな狭いベンチで何か言い争っている様子で、何を叫んでいるのかここじゃ聞こえない。


近づこうと思い足を踏み出そうとしたのだが、体が動かない。
声を出そうとしても、声は出ない。


そこで、確信する。
ここでは私は見ているだけしか出来ないんだ。と。


やがて男女は取っ組み合いの喧嘩まで発展し
女は番傘で、男は日本刀で、公園全土規模で大喧嘩しだした。


公園の遊具が次々と破壊されていく。
凄まじい爆音が辺りに響く。
これだけの喧嘩だ、この二人は仲が悪いのだろう…そう思っていたのだが。


二人は、笑っていた。


それはそれは楽しそうに。



『いい加減くたばりやがれチャイナッ!!』

『その言葉そっくりそのまま返すネ!クソサドッ!』



言葉は物騒なのに、表情は全くの正反対。
あぁ、そうか。この喧嘩は二人にとってとても大切なモノなのか。


不器用な二人の不器用な愛情表現。


中々、素敵じゃないか。こんな恋。
ベタベタな少女漫画の恋愛ストーリーより、私にとってはこっちの方が何倍も素敵に思えた。



スッと急に景色が霞んでいく。
喧嘩していた男女の姿がドンドン見えなくなっていく。
夢が、終わるのだ。と頭が勝手に理解した。

男女の姿はもう完全に見えない。

女は…もう一人の私は、あの男とその後どうなったのだろうか?


とても気になるのだが…きっともうこの夢を見ることは二度と出来ないのだろうという予感があった。



願わくば、二人の想いが通じ合っていれば良いのにな。と想いながら私は静かに目を閉じた。



*



目が覚めると、そこは屋上だった。
辺りは夕陽によって何もかもオレンジ色に染まり、カラスがとても五月蠅かった。

んっ?と記憶を巡らせてみると、確か今日は風が気持ちよく天気もいいから昼休みに一人屋上で弁当を大量に食べて
…あぁ、なるほどそれからお腹いっぱいになって寝てしまったのか。

近くに置いてある携帯をパカリと開けると、ディスプレイには16:30の数字。

んーっと伸びをすると、寝た体制が悪かったのか若干体が痛かった。
欠伸をしつつも、昼休みのまま放置していた空の弁当箱を素早く片付け、自分の教室に戻るべく屋上を後にした

階段を降りながら、なんとも不思議な夢を見たものだと、再びこみあげてきた欠伸を噛み殺しながら歩いていると
ふいにドンッと肩が誰かとぶつかった。
今のは完全に前を見てなかった自分が悪かったので、素直に謝ることにする。


「あっ、すいませんヨー。全然前見てなかった…。」


言葉が、完全に止まる。

私の目に映るのは、蜂蜜色の髪に恐ろしいほど整った綺麗な顔。
あの黒い服も着てないし、勿論日本刀も持っていないが
ウチの制服に身を包んだ、夢の中の男の姿がそこにあった。


「あっ…。」


『チャイナ。』


声が、聞こえた。
夢で見たあの男の声が。



でも目の前に居る男は、あの男と違う。



違うとわかっているのに…目が離せない。


『テメェ!何度言ったらわかるネ!私はチャイナって名前じゃないアル!!』
『お前だって俺の事、名前で呼んだことねェだろィ?』


先程の夢で聞こえなかった二人の言い争いの内容が頭の中で再生されていく。
きゅうぅっと胸が締め付けられて、何とも言えない感情でいっぱいになる。


どうしてだろう?なんだか今無性に泣きたい…。


でも、ここで泣いてはダメだ。
目の前の男はきっと何も知らないのだから。
このままだと変な奴だと思われる。(もう思われているかもだが。)


とりあえず、一刻も早くこの場を離れよう。


「ご、ごめんなさいヨ!私ボーっとしてて…。」


顔を俯け、男の横を素早く通り過ぎようとして足を踏み出した瞬間。
ぱしっと左腕を掴まれ、それは叶わなかった。
驚いて顔をあげれば、男は……笑っていた。


夢で見たのと同じ、それはそれは楽しそうな表情で。





「どこ行くんでさァ?チャイナ。」





目の前の男の声を聞いた瞬間。
さっきの倍、胸が苦しくなった。
掴まれた左腕が熱い。
ぐにゃりと視界が涙で歪む。


「…っ!」


ボロボロとこぼれる涙を、男は優しく拭っていってくれた。
だけども涙は止まらない。





「会いたかったぜィ………神楽。」





拭う手はそのままで、耳元で優しく囁かれた言葉に私はたまらず男に抱き着いて大声で泣いた。
子供みたいに、わんわん泣き叫んで。
それでも男は何も言わず、ただ抱きしめてくれた。



『なァ、お前“転生輪廻”って信じるかィ?』
『転生輪廻?なんだヨそれ?』
『死んだ魂が、この世に何度も生まれ変わってくること。』
『ふーん…私はよくわからないアル。死後の世界なんて誰も知りようがないからナ。』
『ははっ、言うと思った。』
『むっ、じゃあお前はどうなんだヨ!!』
『俺?』
『うん。』
『俺は信じる。生まれ変わっても必ずお前を見つけてみせるさ。』
『…くっさ。』
『うっせー。』
『でも…待っててやってもいいアル。身を粉にしてまで私を見つけるヨロシ!』
『なんで上から目線なんだよオメェはよ。…まぁ、首長くして待ってろィ。』
『約束アルッ!』
『あぁ約束な。』



泣きじゃくる私の脳内に映し出されるのは、あの二人の小さな恋の約束。
あぁそうか…私全部思い出した。

この男は…コイツは、地上最悪の性格の悪さで、腹黒だし、変なところで餓鬼だし、乱暴だし、全然加減を知らない…本当にどうしようもない男。
だけどちゃんと優しいところも不器用なところも、全部全部知っている。



だって前世では死ぬまで一緒に居た仲なんだから。



「約束…守ることが出来たな。」
「お、遅いアル…。クソサド…!」
「クソサドじゃねぇ。俺は名前呼んでやったんだ、お前もちゃんと名前で呼びやがれ。」
「…ありがとう、総悟。」


小指と小指で誓い合った約束は、時を経て今こうして果たされた。





やっと…やっと会えた。
神様、ありがとう。
もう一度この人と出会わせてくれて。





***



永遠に続け、二人の愛。



*転生パロ
沖田→高校三年・神楽→高校一年
沖田の記憶は、ずーっとあったという色々無茶設定。

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