□眠る少女は天へと還る
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パンッと軽い音が辺りに響いたと思うと
抱きしめていた自分よりも少し大きな体がドシャリと崩れ落ちていった。
自分の首に絡みついていた長い舌も力なく地面へと落ちてゆく。
俺はその光景を、何も考えずにただ見ていた。


「………ねえちゃん。」


ポツリと呟くのは、今自分が撃った少女の愛称。
自分の力が足りず何もしてやることができずに…俺が殺してしまった。
辺りに広がるのはどこか甘い墓土の匂いと血の匂い。
それがどこか鼻にツンッとくる。


「あれ……。」


ふいに自分の頬が濡れていることに気が付いた。
何だろうと思い拭ってみると、それは水分で。
そこで俺は初めて自分が泣いていることに気が付いた。


「お、かしいな…拭っても拭っても、止まらないや。」


涙なんか流すつもりじゃなかったのに。
あぁ止まらない止まらない。

俺の涙は頬を伝い、地面に落ちていき
静かに眠っている少女の頬も濡らしてゆく。

まるで少女も泣いているようだ。

過酷な運命を背負った少女はもう二度と目を開けない。
あの綺麗な声で俺の名前を呼ぶことも無い。



自分の無力さが、本当に憎かった。



ねぇ、ねえちゃん。
助けてあげられなくて本当にごめんね。
怖かったでしょう?辛かったでしょう?苦しかったでしょう?
でももう大丈夫だよ。
もう何も、ねえちゃんを縛り付けるものは無いから。
傷つくことも無い、心配することも無い。
ただ、安らかに眠るだけ…。





俺は、血の海に沈む彼女の体をそっと持ち上げて牢獄道を後にした。





◆◇◆◇



『さようなら。』


最後に呟いた彼女の言葉は、どんな想いが混じっていたのだろう?





*融合失敗ENDにて。

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