□oath
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「「あっ。」」


とある森の中。
それはお互いが望んでなかった対面で。
まぁ運命の悪戯といいますか、再び二人は出会ってしまったのです……
裏同士が。


「俺の顔見て、そのクソムカつく面…テメェ、裏の方のフレイキーだな。」
「あんたは言うまでもなく裏の方ね。変態さが滲み出てるわ。」
「変態ってなんだ!俺は変態じゃねぇ!変態はあのクソ英雄の方だ!!」


*所変わって、英雄宅。


「はっくしょんっっ!!」
「うわっ汚ねぇ?!おいコラ英雄!こっち向けてくしゃみすんな!!」
「すまない、急に鼻がむずむずして…。というか、何で君達ここに居るのだ?」
「おかしいな、馬鹿は風邪ひかないのに。」
「無視か?!そして、馬鹿とは私の事かぁっ?!!」


*所戻って、森の中。


「あんたも同じみたいなもんよ。頭の中、殺戮かエロいことばっかのくせに。」
「なっ…?!」
「あら図星?あんた一回頭かち割ってもらった方がいいんじゃない?ランピー辺りに。」


如何にも“私はあなたを馬鹿にしてます”という表情で吐き捨てるフレイキー裏。
この言葉に軍人さんは勿論ぶちギレです。
額に青筋浮かべて、手をわなわなさせて…完全に殺戮モード入りました。
隠し持っている愛用のナイフをジャッと取り出すと、フレイキー裏に向かって
威嚇するように突き立てます。


「言わせておけば…このクソアマ!いいかっ?!俺より表の方が何倍もエロい事考えてやが…!」


言葉を言い終える前に、軍人さんの意識はぐぃっと何かに引っ張られ、次第に遠退いていきます。
まぁ言葉の方は、殆んど言ってしまってますけどね。
意識を保っていられなくなった軍人さんの手からは、突き立てていたナイフがカランと地面に落ち
やがてガクンと力なくその場に座り込んでしまいました。


「ちっ、表め…!おいっクソアマ!テメェ今度会ったら覚えとけよ!!」


そう軍人さんが叫ぶのと同時に“パチンッ”と軽い音が辺りに響き、金色の瞳をした軍人さんは完全に眠ってしまいました。
そして変わりに出てきたのが…。


「お前は何言ってんだあぁぁあ?!僕は……ってあれ?」


緑の瞳をしたフリッピーです。
先ほど体の主導権を握っていた軍人さんの言葉に対し、かなりご立腹状態での登場ですね。
そんなフリッピーはというと


「あ…えっと、フレイキー。裏の馬鹿が変なこと言ってたけど、あれ違うからね!」


座り込んだ体勢から、素晴らしいスピードで立ち上がり
軍人さんが眠る間際に叫んだ言葉に、わたわたと焦りながら必死の弁解スタートです。


「嘘だからね!信じちゃ駄目だよ!!」
「……。」
「僕よりもアイツ(覚醒)の方がいやらしいし、どちらかと言えば英雄さんの方がスケベだから!!」


*所変わって、英雄宅。


「ぶぇーくしょいっ!!」
「オメェわざとかっ?!だからこっち向けてすんなって言ってんだろ!!」
「ワザとなものか!出るものは仕方ないだろ?!…ってだから何で君達がここに居るんだって?!!」
「おい、英雄。腹減った、パン。」
「言葉のキャッチボールって大切だよねぇえぇええっ?!!」


*所戻って、森の中。


……なんだか酷い言われようです。英雄さん。
さてさてそんな英雄さんは英雄さんで、とりあえず置いておきまして。
いくらか弁解をしていたフリッピーですが
何を言っても彼女から、何も言葉が返ってこないので
“話したくないほどドン引きされて、嫌われてしまったのではないか”と
彼の焦りは最高潮に達します。


「…………。」
「…フ、フレイキー?」
「………………。」
「ほ、本当に違うんだよ?」
「……確か、貴方とは初めてかしら?」
「えっ?初めてって…。」
「初めまして、私は“もう一人”のフレイキーよ。」



「……………………はいっ?」



たっぷり10秒は経ってのフリッピーの返答。
そりゃそうですよね。
てっきり、軍人さんの言葉について何か言われる(『嫌い!』とか『そんな人だとは思わなかった!』とか)
と思っていたのに、出てきた言葉は全然違う事についてですよ?
それに突然“もう一人”だなんて言われれば誰だって驚きますもの。


「何その反応。もう一人のフレイキーだって言っているでしょ?」
「えっと……フレイキーって双子だったっけ?」
「あなた…天然?それともワザと?」
「いやいやいやいや!大真面目なんですけどっ!!」
「もうこの際、面倒だからストレートに言うわ。私はフレイキーの別人格だって言ってるのよ。」
「っ!あー……裏の言ってた『あのクソ裏女』ってのは、君の事だったのか。」


随分前に、軍人さんと意識が交代する間際に彼がブツブツと呟いていた(実際は叫んでいた)
言葉をうっすらと聞いていたフリッピーは、ずっと『裏女って誰だそれ?』思っていたのです。
ですが今回、彼女がフレイキーの別人格……すなわち“裏”ということが判明した結果
軍人さんの言っていた“裏女”が彼女であると、やっと謎が解けました。
胸のモヤモヤがスッキリ解消です。
ですが、自分の知らないところでフレイキーにも別人格が生まれていた事に対しては
衝撃が大きすぎて、何がなんだか頭の中ぐるぐる。


「あの性根腐りきった軍人の事は果てしなくどうでもいいけれど
 とりあえず貴方に出会えてよかったわ。たくさん話したい事があるのよ。」


謎が解けてスッキリ半分、別人格誕生に戸惑い半分のフリッピーですが。
そんな彼を知ってか知らずか、フレイキー裏はツカツカと早足でフリッピーに歩み寄り
離れていた距離を一気に詰め、戸惑う彼の腕を掴んでさっさと歩き出しました。
突然の行動に、フリッピーは訳がわからず。
とりあえず自身の腕を掴んでいる彼女の手を、空いている片方の手で掴み、彼女の歩みを止めました。
これにフレイキー裏は、ちょっと不機嫌そうな顔でフリッピーを睨みます。


「何?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!まだ僕はフレイキーにも別人格が存在したことに気持ちの整理がついてないんだけれど。」
「そんなことは話しながらでも整理させておいて。早くしないとフレイキーが起きちゃうから。」
「えっと、起きるって…普段のフレイキーが?」
「そうよ。それ以外に何があるの?」
「いや、特には………。」
「じゃあ、いいでしょ。ここじゃゆっくり話せないから、とりあえずフレイキーの家に行くわよ。」


動揺を隠せずに頭の中パニック状態のフリッピーに対し
フレイキー裏は“時間が無い”と繰り返すばかりで再び歩き出します。
彼女の有無を言わせない不思議な圧力を受け、フリッピーはもう何も言えなくなるのでした。
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