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□青年の苦難はいつも身近から
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とりあえずフレイキーには隣の部屋で待機してもらい
俺は床に沈んだバカを無理やり起こし、その場で正座させこの状況を詳しく説明させた。
「…つまりは、俺に好きな子を作らせるためにはまず何かきっかけをと思ったお前は
たまたま近くに居たフレイキーに頼み込んでこうして来てもらった、と?」
「た、たまたまじゃねぇぞ!俺は最初からフレイキーに頼みに行ったんだ!!」
「…ほぉ、なんでまた?」
「そ、それはお前…ギグルスにはカドルスがいるし、ペチュニアにはハンディだろ?
ラミーは俺よく知らねぇからな…それならフレイキーしか居ないだろ?フリーだし何より頼みやすかったし。」
誇らしげに説明しだすこのバカ。本当にバカ。
何がフリーだからだ。何が頼みやすかっただ。
よりによって最悪な人選してきやがってっ!!!
座っていた兄貴の胸倉をガッとつかんで、俺は思いっきりガツッ!と頭突きを喰らわす。
「がっ?!!」
「おーまーえーはぁああ!!なんで最凶軍人が好いて好いて仕方ない女をわざわざ連れて来た?!
死亡フラグ立ちまくりじゃねぇか!恋が芽生える前に俺らの命途絶えるわっっ!!!」
「お、落ち着けリフ!!話し合おうっ!!」
「落ち着けるかぁあああぁああっ!今すぐお引取り願え!今すぐにだっ!!」
「だ、大丈夫だろっ!外出るわけじゃねぇし、家の中で話すだけだぜ?!」
「そのちょっとの油断で何度死んだっ?!何度殺されたっ?!!軍人はフレイキーのことになると千里眼発動させるぞっ!」
「マジでかっ?!!」
千里眼は本当かどうか知らないが、恐らく奴ならそのくらいのこと出来そうだ。
ってそれは今どうでもよくて!
とりあえず早急にフレイキーに帰ってもらわないと、確実に死ぬ。殺られる。
バカ兄貴は放っておき、急いで隣の部屋に居るフレイキーの元へ走るが、バンッと扉を開けるとそこには誰も居なかった。
えっ?アイツどこに…。
「あの…。」
「うわぁあああっ?!!」
「ひゃっ!」
トンッと肩に走る小さな衝撃に、俺の体は情けないくらいにビクッとなった。
驚いて後ろを見てみればそこには大きな目をさらに大きくしてビックリしてるフレイキーの姿。
と。
「こんにちわリフティ。」
ニコニコ顔のフリッピーの姿。
し…ししししし死亡フラグきたーーーーっ?!!
「……………。」
あまりの衝撃に何も言葉が出ず、俺はピシリとその場に固まってしまった。
なんでフリッピーがここにっ?!まさか本当に千里眼っ?!!
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!
「あの勝手に部屋出てすみません、言おうと思ったのですがシフティさんとお話し中でしたので…。」
「……………。」
どうやら兄貴と口論(?)中にフレイキーは部屋を出ていたらしい。
あの時、俺の頭の中はいっぱいいっぱいだったからフレイキーが部屋を出たことに気がつかなかったんだろう。
まぁ、それはいいとして。
問題はフリッピーが何でここに居るのか?だ。
ちらりとフリッピーを見てみると、表情はいつもの穏やかな笑顔。
そしてなぜか大きな荷物を抱えている。
なんだろう?と思いよく見てみると、それはスーパーとかで売っている食品のように見えた。
「フリッピーそれ…。」
「あっ、これ?すごい荷物でしょ?フレイキーやっぱり買いすぎだと思うよ、これ。」
「えっ?買いすぎって…?」
「今ですね、シフティさんに頼まれていた晩御飯の材料を買いに行っていたんです。」
「…はっ?晩御飯?」
ちょっと待て。
晩御飯?なんだそりゃ?俺は聞いてねぇぞ。
「えぇ、今日はリフティさんと話すついでに何か作ってくれと言われたので、ハリきったらいっぱい買いすぎちゃいました。」
「そしてその買出しの最中に僕と出会ってね、皆で一緒にご飯食べようって誘われたんだ。」
「皆で食べるご飯は美味しいですからね。」
あぁ、なるほどね。そういうことか。
今ここにフリッピーがいるのは千里眼とかじゃなくて、フレイキーが呼んだからか。
そうかそうか、千里眼は無かったか…ってバカ兄貴ぃいぃいぃいいい!!!
お前何飯まで頼んでんのっ?!アイツ本当にバカだ地上最強最悪のバカだッ!!!
とりあえず飯のことは断って帰ってもらおう!今ならまだ間に合う。死亡フラグ免れるかもっ!!
「フレイキー、飯のことだけど…。」
「僕、頑張って作りますね!確かお二人はお魚好きでしたよね?フリッピー悪いけれど手伝ってくれる?」
「うん、勿論だよ。リフティ、台所借りるね。」
「えっ、あぁ…その。」
「どうしたのリフティ?あ、僕なら大丈夫だよ。今、裏の人格抑えつけているから当分出て来れないし。」
「いや、そうじゃなくて。」
なんだろう?フリッピーは全く怒ってねぇ。
いつものニコニコ顔のフリッピーだ。
これって…あれか?今フレイキーが居るからか?
フレイキーが居るから穏やかなフリッピーなのか?
つーことはフレイキーが居なくなった瞬間…
終わる。
ちょっマジ勘弁してくれよ!
早かれ遅かれ俺の今日一日は死で終わる確定?
尋常じゃないくらいの汗が滴り落ちる。
どうしてこうなった?
どうしてこんな事になった?
全てはあのバカのせいだ。
バカ兄貴のせいだ。
つかアイツはどこに行った?
まさかもう殺られて……!
「お、フレイキーにフリッピー悪ぃな。俺ら全然料理と駄目だからいっちょ頼むわ。」
ドシッと肩にのしかかるのはちゃらんぽらんな兄貴の手。
見るとどこも怪我もしてないし、いつものマヌケ面でヘラヘラ笑っていやがる。
…あ、生きていたのか。
「任せてください。じゃあフリッピー行こう。」
「そうだね。二人はゆっくりしててよ。」
「おー。」
ニコニコしたフレイキーとフリッピーはお互いに幸せそうに笑いながら台所へと向かっていく。
その姿を俺は状況が飲み込めていないまま、ただ見ているだけしか出来なかった。
「……………。」
「……………。」
場に流れるは沈黙。
少し離れた先の台所ではフレイキーとフリッピーが仲良く料理でもしているんだろう。
笑いあう二人、その姿はまさに恋人同士…いや新婚さんのよう。
だと、思う。
うん、こっからじゃ姿は見えないが確実にそうだ。
まぁ…あの二人はあの二人で置いておくとして、だ。
俺はこのバカと話をつけねぇとな。
「おい………そこのバカ。」
「せめて兄貴はつけようかリフちゃん。」
「どういう状況だ?オイ。これどういう状況でこんなことになっているんだ?」
「そりゃオメェ、まんまだよ。皆で話しながら上手い飯食うってヤツだろ?」
「それじゃただの飯会だろうがっ?!えっ?なんだったっけ?最初はなんか違う趣旨じゃなかったっけ?」
「もう面倒になってきたからさー。いいんじゃね?もうどうにでもなれって感じ。」
「あっ、そう。まぁそれなら死亡フラグ上手い具合に免れそうだな……って
ふざけんなぁあああぁああっ!!!お前、俺がどれだけ苦しい戦いをしてたと思っているんだっ?!!」
「あ?んなこと知るかよボケが!!テメェが勝手に戦っていただけだろうがっ!!
それともあれか?!オメェ本当にフレイキーとの間に恋を芽生えさせたかったのかっ?!あぁっ?!」
「ばっ、ちげーよ!タコ!!」
「おーおー!照れちゃって可愛いねぇリフちゃんっ!」
「お前もう死ねよ!頼むから!!一回といわず何度でも死ね!!!」
「実の兄貴に向かって死ねとはなんだコラ!お前が死ね!!」
「お前など俺の兄貴じゃねぇっ!だだのバカだ!」
「じゃあお前はアホだっ!!」
ガッと同じタイミングで俺たちは殴りかかる。
ドッタンバッタンとご近所迷惑極まりない騒々しさで俺たちの戦いは始まった。
何年ぶりだろう?コイツと殴り合いの喧嘩したのは。
小さい頃は毎日のようにしたもんだ。
……って今はそんなのどうでもいいか。
「「飯が出来るまでの間で俺がお前のその減らず口、二度とたたけなくしてやるよ。」」
美味しい美味しい料理が出来るまでいっちょ運動といきますか?
◆◇◆◇
あっお前!それ俺が狙っていたヤツ!
バカか。先にとったもん勝ちだろーが。
テメェ…さっきのヘッドドロップの仕返しかコノヤロー!
お前こそ、そのウザイいちゃもんはさっきのエルボーの仕返しか?
二人ともご飯食べる時くらい喧嘩はやめようよ。
ふふっ仲がいいんですね。
………………。
………………。
((仲良くねぇよっ!!))