小説

□とっさに背中へ隠した手に握られたラブレター
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とっさに
背中へ隠した手に
握られたラブレター


Title by『愛すべき、幻。』


告白するなら今日しかない。
ずっと前からこの日に決めてた。


今日はわたしにとって特別な日。
1年前の今日、初めて君と話したの。


そして、君に惹かれた。


この手紙は1年間の想い。
君に渡すなら今日。


ずっとそう思ってた。


幸い放課後の教室に人はいなくて、
君を呼び出して告白するには最適だった。


でも意気地なしのわたしに
そんな勇気なんかなくて、
手紙を持ったまま、
どうしようか考えていた。


このまま誰にも見られず、
君の机に手紙を入れて帰ろうか、
それとも直接渡そうか。


悩んだけど、やっぱり
君に直接渡したいと思った。


携帯を開いて
君にメールを送ろうとした時、
教室の前のドアが開いた。


中に入ってきたのは
他の誰でもなく君だった。


「あれ?まだ残ってたんだ」


好きな声がわたしに言う。


あまりのタイミングの良さに
わたしは驚いたまま立っていた。


「ねぇ、手に持ってるそれ何?」


君にそう言われて
この手紙に意識が集中する。


「え……何でもないよっ!」


背中に腕を回して、わたしは笑った。


とっさに背中へ隠した手に
握られたラブレター。


渡すのは当分先になりそうだな。


やっぱり
いきなり渡すなんて無理。



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